内部不正や法令違反の情報が外部に漏れるリスクが高まる中、「公益通報制度」の重要性は年々増しています。組織に通報が寄せられた場合、適切な対応を取らなければ、信用失墜や法的責任に発展する可能性もあります。この記事では、公益通報を受けた組織が取るべき行動と、してはならない行動について、法律と実務の観点から詳しく解説します。
公益通報制度とは何か？基本を理解しよう
公益通報とは、従業員などが企業や団体内の違法行為を内部・外部の適切な機関に知らせる制度で、公益通報者保護法により守られています。対象となる違法行為には、環境法令違反、消費者保護法違反、労働基準法違反などが含まれます。
通報先には、内部通報窓口（企業内）、行政機関（外部通報）、報道機関やSNSなど（第三者通報）があります。特に第三者通報は、社会的影響力が大きいため、組織にとって緊急性の高い対応が求められます。
通報を受けた組織がまずすべき対応
通報を受けた際、最も重要なのは冷静かつ迅速な初期対応です。まず、通報内容を正確に把握し、事実関係を確認するための社内調査の体制を整えます。
初動として以下の手順を守ることが推奨されます。
- 通報の記録・証拠化
- 関係部署の連携と情報共有（必要最小限に）
- 通報者の匿名性や安全の確保
- 利害関係のない第三者（社外弁護士等）の関与を検討
してはならないNG対応：信頼を失う行動
通報を受けた際に絶対にしてはならないのが、通報者への報復的対応です。これには以下のような行為が含まれます。
- 通報者の特定・詮索
- 降格や異動などの不利益処分
- 通報の隠蔽・改ざん
- 外部調査への協力拒否
公益通報者保護法では、通報を理由とした不利益取り扱いは禁止されており、企業に損害賠償責任が発生することもあります。
具体例：適切な対応事例と失敗事例
ある製造業の事例では、通報内容を受けて速やかに第三者調査委員会を設置し、調査結果を公開。その誠実な対応により、企業価値を損なうことなく信頼を維持することができました。
一方、通報を握り潰し、後日メディアに暴露されたことで企業の株価が急落し、経営陣が辞任に追い込まれた例もあります。適切な対応ができなかったことが、結果的に組織全体に大きな損害を与えたのです。
対応マニュアルと内部体制の整備が鍵
通報対応を円滑に行うためには、あらかじめ対応マニュアルや内部通報制度の設計を行い、定期的に訓練や教育を実施することが必要です。
特に総務・法務・人事などの部門は、通報対応の中心を担うため、法的知識とコンプライアンス意識を持った人材の配置が求められます。
まとめ：通報への適切な対応が信頼を守る
公益通報は、企業にとって痛みを伴うものかもしれません。しかし、適切に対応することで不祥事の拡大を防ぎ、むしろ企業の信頼性を高めることができます。
通報はリスクではなく、組織を健全に保つチャンス。誠実かつ迅速な対応を心がけましょう。