一見すると「業者が仕入れて利益を乗せて売るのがOKなら、個人が同じことをしても良いのでは?」という疑問はもっともです。しかし、転売が批判される背景には法律、倫理、社会的影響などさまざまな要因が絡んでいます。この記事では、転売に関する理解を深めるためのポイントを整理します。
業者と個人の違いとは?
業者は「事業者」としての責任を持ち、商品を販売するにあたって古物商許可や商取引法の遵守、消費者保護の対応などを行う必要があります。例えば、返品対応や商品の安全基準を満たす義務があります。
一方、個人の転売はこれらの責任を負わないことが多く、法的グレーゾーンを突く行為になりやすい点が問題視されます。特に営利目的で繰り返す場合、古物営業法により古物商の許可が必要になります。
転売が批判されるのはなぜか
特定の商品の転売は社会的に問題視されることが多く、以下のような理由が挙げられます。
- 人気商品を買い占めて市場に品薄を起こす
- 定価を大幅に上回る価格で再販し、消費者の入手機会を奪う
- 不正な入手手段(自動購入ツールなど)によるフェアでない競争
たとえば、ゲーム機やチケット、マスクなどの転売は、社会的批判が非常に強く、法規制も強化されています。
価格設定は本当に不公平なのか?
店舗が仕入れ価格と販売価格に差をつけるのは、人件費、家賃、在庫リスクなどを含めた適正な事業コストを反映しているためです。これは「ビジネス」として認められた営利活動であり、自由経済の中で自然なことです。
一方、個人の転売行為はしばしば「付加価値を生み出していない価格の吊り上げ」と見なされることが多く、「不当利得」と批判されやすくなります。
実際に違法になるケースとは?
すべての転売が違法というわけではありませんが、以下のような場合は法律に抵触する恐れがあります。
- 営利目的で古物を継続的に販売する → 古物営業法違反
- チケットの高額転売 → チケット不正転売禁止法違反
- ブランド品の偽装販売 → 商標法違反・詐欺罪
特に人気商品の買い占めによる高額転売は社会問題化しており、行政も規制の強化を進めています。
「転売で成功した人」への注意点
「転売で稼げる」とする情報商材やSNS投稿には誇張や嘘も多く含まれます。実際には、赤字リスク・在庫リスク・法的トラブルなど数多くの問題がついて回ります。
また、消費者庁や国民生活センターも、転売や副業詐欺の注意喚起を行っており、簡単に儲かる話には注意が必要です。
まとめ:転売が社会に与える影響を考える
転売そのものは一概に違法とは言えませんが、「誰かの欲しい物を不当に高値で独占する」「フェアな流通を妨げる」という構図が社会の共感を得にくいのは確かです。
適正な手続きや許可を経たビジネスであれば成立しますが、個人で行う場合は慎重な判断が求められます。「ルールに基づく商取引」と「自己中心的な利益追求」は異なるという視点が、転売問題を理解する鍵となります。