運転免許の返納は高齢者だけの話ではありません。知的障害や精神的な配慮が必要な方についても、時として警察などから返納の助言がなされることがあります。しかし、それは法的強制力のある指導ではなく、あくまで助言にとどまる場合が多いのです。本記事では、知的障害のある方が免許を保持することの意味や、警察からの返納の勧めの背景についてわかりやすく解説します。
運転免許の取得と知的障害の関係
日本では知的障害があるからといって一律に運転免許が取得できないというわけではありません。運転免許を取得する際には、適性検査により運転に支障がないと判断されれば、通常通り教習を受け試験に合格すれば免許を取得できます。
実際に中度の知的障害の方でも免許を取得し、日常生活で車を活用している事例も多くあります。本人の能力に応じたサポート環境があることで、安全な運転が可能なケースは十分にあります。
警察による免許返納の「勧め」とその実態
警察官が「免許を返納したほうがいい」と発言することは、法律上の強制力はありません。それはあくまで「助言」であり、本人が納得した上で判断するべきことです。
たとえば職務質問の場面で、相手の様子から判断して「安全運転に不安がある」と感じた場合、警察官が返納を促すことは稀にあります。しかし、その根拠や対応には注意が必要です。
知的障害を理由にした返納勧告は適法か？
知的障害があるというだけで返納を強く促す行為は、人権的な配慮に欠ける可能性があります。憲法13条が保障する「個人の尊厳」に照らしても、合理的な説明や医学的・交通的な根拠がないまま返納を迫ることは適切とは言えません。
むしろ、「事故歴も違反歴もない人」に対して障害だけを理由に対応を迫るようであれば、偏見や差別と受け取られかねません。
免許の取り消しや制限が行われるケース
実際に免許の停止・取消処分が行われるのは、次のような場合です。
- 医師の診断により運転に著しい支障があるとされた場合
- 重大事故や違反を繰り返し、認知機能や判断力に問題があるとされた場合
- 公安委員会による適性診断の結果で不適格と判断された場合
上記のようなプロセスを経た正式な判断であれば、行政的な処分が行われる可能性もあります。
本人や家族ができる対処と相談先
本人やその家族が不安に感じた場合は、まず医師や専門機関に相談するのがよいでしょう。発達障害支援センターや地域の福祉課などでも情報提供や相談を受け付けています。
また、警察署や運転免許センターの「相談窓口」を活用することで、中立的かつ根拠に基づいたアドバイスを受けることができます。
まとめ：免許返納の判断は本人と家族の納得が最優先
知的障害がある方にとっても、自立と社会参加の手段としての運転は重要な要素です。免許返納は決して一方的に迫られるものではなく、本人と家族の意志、専門家の判断をふまえた上で検討されるべきです。
もし警察官の対応に不安や疑問を感じた場合は、相談窓口や人権相談ダイヤル（0570-003-110）などに連絡することも検討してください。