会社内での盗難事件に警察を呼ばない理由とは?企業が捜査を避ける背景を解説

社内で盗難が発生し、しかも被害額が高額で社員の関与が疑われるようなケースでは、外部から見ると「なぜ警察に通報しないのか?」という疑問を持つのは自然なことです。しかし、企業側には警察を介入させないさまざまな事情や意図がある場合もあります。本記事では、社内盗難と警察対応に関する実務的な背景や、企業が抱えるジレンマについて解説します。

会社が警察に通報しない主な理由

企業が社内盗難にもかかわらず警察沙汰にしない理由は複数あります。まず第一に挙げられるのは社内の信用・評判への悪影響です。事件が外部に漏れれば、取引先や顧客からの信頼を損ねるリスクがあります。

また、社内に警察が介入することで、従業員の士気低下や不安感が高まり、生産性の低下にもつながる可能性があります。企業イメージを重視する大手企業ほど、内部処理を優先する傾向にあります。

内部調査と処分で解決を図るケース

多くの企業では、コンプライアンス部門や総務部門が中心となって内部調査を行い、加害者が特定された場合には懲戒処分などの社内措置で対応することがあります。これは警察に通報せずに法的責任を問う「私的制裁」に近い対応です。

懲戒解雇や始末書、減給といった処分にとどめることで、外部に事件性を広げずに事態を収束させる意図が見えます。

警察を呼ぶべきとされるケースとは?

一方で、被害額が高額(数十万円以上)であり、明確な証拠がある場合や、繰り返し発生している常習性が認められる場合には、警察への通報が検討されるのが通例です。また、関係者間のトラブルが激化するリスクがあるときも、第三者機関の介入は有効です。

実際に、社内防犯カメラやICカードログなどの証拠によって逮捕に至った事例もあります。

企業の法的リスクと通報義務の有無

実は、企業には社内で起きた犯罪行為を必ずしも通報する義務はありません(刑事訴訟法上の告発義務は原則なし)。そのため、「黙って解雇して終わり」という対応も理論上は可能です。

ただし、被害者が社員や取引先だった場合には、その対応が二次的な損害賠償問題を招く可能性もあるため、透明性のある対応が望まれます。

実際の事例:内部処理か警察通報かの判断

ある中小企業では、経理担当が約50万円の横領を行ったとされる事件で、企業側は刑事告訴ではなく、退職金カットと自主退職という形での処理を選択しました。経営者は「裁判で社名が出るのを避けたかった」と説明しています。

一方で、上場企業では10万円未満の物品窃盗でも内部通報制度から発覚し、警察に被害届が出されたケースもあります。企業の規模や業種によって対応方針が大きく異なることがわかります。

まとめ:通報しない選択の裏にあるもの

社内での盗難事件に警察が介入しない場合、その背景には企業の危機管理上の判断や、法的リスク、社会的信用を守るための方針があります。一見不可解に思える対応も、会社としての経営判断や従業員保護のバランスを考えた末の選択であることが少なくありません。

従業員の立場で疑問がある場合は、コンプライアンス相談窓口や労働組合、外部の法律相談窓口を活用してみることをおすすめします。

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