配偶者の不倫が原因で深く傷ついた場合、慰謝料請求は被害者の当然の権利です。しかし、夫婦がまだ婚姻中か、あるいはすでに離婚に至っているかで、その請求額や根拠には違いが出てくることがあります。本記事では、不倫による慰謝料請求について、離婚の前後で金額や判断がどう異なるのかを詳しく解説します。
不倫慰謝料の法的な位置づけとは
不倫(不貞行為)は、法律上「不法行為」に該当し、民法709条に基づいて損害賠償を請求できます。この請求は、配偶者だけでなく、不倫相手にも可能です。
慰謝料の目的は、精神的苦痛に対する賠償であり、婚姻関係が破綻したか否かが賠償額の判断に大きく影響します。
離婚前に慰謝料請求する場合の特徴
配偶者が不倫をしているが、まだ婚姻関係が継続している状態での慰謝料請求では、「夫婦関係の破綻には至っていない」ことが考慮されるため、請求額は一般的に50万〜100万円程度にとどまるケースが多く見られます。
ただし、婚姻期間が長かったり、子どもがいたり、夫婦関係に与えたダメージが大きい場合は、それ以上の額が認められることもあります。
離婚後に慰謝料請求する場合の影響
不倫が原因で離婚に至った場合、不倫が婚姻破綻の決定的な原因と認定されることが多く、慰謝料額も高くなります。この場合、100万〜300万円の範囲で認められることもあります。
例えば、配偶者の不貞行為によってうつ状態になった、生活が困窮したなど、実際に被った損害が大きければ金額も上乗せされる可能性があります。
慰謝料額に影響する主な判断要素
- 不倫の期間と頻度
- 不倫の主導性(どちらが積極的だったか)
- 婚姻期間の長さ
- 子どもの有無と影響
- 離婚したか否か
これらの事情を総合的に判断して慰謝料額が決定されます。つまり「離婚した=必ず高額」というわけではなく、他の事情とのバランスが考慮されます。
時効と請求のタイミングにも注意
不倫による損害賠償請求には時効があり、「不貞行為を知ったときから3年」「行為があった時から20年」のいずれか早い方が適用されます。離婚した後でも、3年以内であれば不倫相手に請求は可能です。
離婚協議や調停で相手配偶者に慰謝料を請求しなかった場合も、不倫相手に対する別途請求は可能ですが、時間が経過するほど立証のハードルが上がる点には注意が必要です。
実例:裁判所の判断事例
2020年の東京地裁の判例では、結婚10年以上で子どもが2人いる夫婦のうち、妻の不倫が原因で離婚に至ったケースにおいて、不倫相手に対して200万円の慰謝料支払いが命じられました。
一方、離婚していない夫婦のケースで、不倫期間が短く、不倫相手が既婚と知らなかった場合には、慰謝料30万円が認められたにとどまりました。
まとめ:状況によって大きく異なる慰謝料の額
不倫の慰謝料請求は、離婚しているかどうかによって金額に明確な差が出ることがあります。離婚後は精神的損害が大きいと認められやすく、請求額も高くなる傾向がありますが、それだけでなく婚姻期間や不倫の内容など、さまざまな要素が総合的に考慮されます。
請求を考えている方は、証拠を確保しつつ、できれば弁護士への相談を早めに行うことが確実な対処につながります。