交差点内での右折と左折の接触事故は、交通ルールの理解があいまいなまま起こることが多い典型的な事例です。特に片側2車線以上ある大型交差点では、左折車の進路や右折車の判断が複雑化し、事故後の過失割合について疑問が残るケースも少なくありません。今回は、対向車線の左折車と右折車が交差点内で接触した場合における法的な見解や実例を元に詳しく解説します。
交差点内の右折と左折における基本ルール
道路交通法第34条第1項では、右折車は対向直進車および対向左折車に進路を譲る義務があります。これを根拠に、「左折車優先」と解釈されることが多くあります。
しかしこれは、あくまで対向車の進行を妨げないという義務であり、左折車がどのような走行をするかまではカバーしていません。特に片側2車線の場合、左折車は左側(第1車線)に進入する義務があり、右側車線(第2車線)へ逸れると過失が問われます。
左折車が第2車線に膨らんで接触した場合の過失割合
典型的なケースでは、左折車が本来入るべき第1車線ではなく、第2車線へ膨らみ右折車と接触した場合、裁判例や保険会社の通達などを踏まえると、左折車が6割の過失、右折車が4割の過失と判断されることが多いです。
これは「左折車優先」とはいえ、走行位置に明確な違反がある場合、免責とはならないという考え方によるものです。
大型車など例外的に第2車線へ進入することがあるケース
大型車や連結車両などは、物理的に第1車線だけで左折しきれない場合があり、このときはやむを得ず第2車線まで膨らむことがあります。
この場合でも、あらかじめ左折時にウインカーと進路を明示し、安全確認を行っている必要があります。さらに、他の車両(特に右折車)に対しての進路妨害を避ける配慮が求められます。
右折車側が注意すべきポイント
右折車はたとえ「左折車が膨らんできた」としても、対向車が優先である以上、完全に自車の安全確認義務を果たしていたかが問われます。
特に、交差点中央で停止せず早めに曲がった、進行方向を途中で変更した、などの挙動があると、不利になる可能性があります。ドラレコや図面を使って当時の状況を正確に伝えることが重要です。
実例:交差点内の右直接触事故に関する判例
2020年のある判例では、左折車が2車線道路の内側を無理に回ろうとして外側車線にはみ出し、右折車と接触した事故において、左折車の走行に明確な過失があると認定されました。右折車にも注意義務違反があるとされつつも、過失割合は6:4で左折車が多く取られる結果に。
判例の考慮点としては、道路構造と進路指定、ドライブレコーダー映像、当時の交通状況などが重視されます。
まとめ:左折優先でも走行方法が問われる
片側2車線交差点における左折車の優先権は、無制限ではなく、適切な走行位置を保ってこそ成り立つものです。右折車としても注意義務は依然重く、双方が法定通りに走行して初めて事故が防げます。
トラブルに遭った場合は、早めに保険会社や弁護士に相談し、証拠を元に客観的な状況を示すことが円満解決への近道です。