離婚時の株式はどう分ける?長期投資と財産分与のリアルな境界線とは

離婚時の財産分与は、不動産や預金だけでなく、株式などの金融資産についても対象となるケースがあります。とりわけ、婚姻前からの長期保有株や、親族からの相続・贈与をきっかけに取得した資産については、個人の財産か共有財産かの判断が分かれるポイントになります。本記事では、株式の財産分与について基礎から実例を交えて解説します。

財産分与の基本ルール:共有財産と特有財産の違い

日本の民法では、婚姻中に形成された財産は「共有財産」として分与の対象になります。一方で、婚姻前から保有していた財産や、相続・贈与によって取得した資産は「特有財産」とされ、分与の対象から外れるのが原則です。

例えば、高校生のときに祖父から譲渡された株式や大学時代のバイト代を元に購入した株は、結婚前の個人資産と見なされる可能性が高く、原則として財産分与の対象にはなりません

婚姻中に行われた投資の扱い:利確の有無は関係ある?

「結婚後に売却していないから」として分与の対象外になるかというと、それは誤解です。たとえ未実現利益であっても、婚姻中に取得した株式や増資した分については、夫婦の協力のもとに築かれた共有財産とされる場合があります。

特に配当金の再投資やお小遣いの範囲で購入した株は「共有財産」としての扱いが強くなります。利確の有無よりも、「いつ、どのような資金で取得したか」が問われる点に注意しましょう。

特殊な技能や職業による利益は?投資家の能力と財産分与

一部の裁判例では、個人のスキルや専門性によって得られた資産は、その人の「特有財産」として扱われたこともあります。たとえば、芸術家や実業家、プロアスリートのケースでは、その能力に依存する収入や資産形成は例外的に認められることがあります。

しかし、投資活動が一般的なサラリーマンや専業投資家によるものである限り、共有財産としての性質を免れにくいのが現実です。資産運用のスタイル(長期投資・短期トレード)よりも、資金の出どころ取得のタイミングが重視されます。

実例:長期保有株式はどう判断されるのか

たとえば、婚姻前に持っていたA社株100株を、婚姻後にさらに100株買い増したとします。この場合、前者は特有財産後者は共有財産として、別々に評価される可能性があります。正確な判断のためには、取得時期・証券口座の取引履歴・資金源の明確な記録が重要です。

また、婚姻後に得た配当金を原資に買い増しをしていた場合、配当自体が共有財産とみなされるため、その株式も分与の対象になりやすいとされています。

トラブルを避けるために:弁護士への相談をおすすめする理由

株式のように履歴が複雑な資産は、法律の専門家である弁護士に相談するのが最も安心です。家庭裁判所での調停や審判に発展した場合にも、適切な主張や証拠提出が求められます。

特に「どこまでが特有財産で、どこからが共有財産か」を明確に線引きするためには、弁護士を通じて論点を整理することが非常に有効です。

まとめ:株式の分与はケースバイケース、記録がカギ

婚姻中の株式は、いつ・どのような資金で取得したかによって財産分与の対象になるかどうかが判断されます。祖父の譲渡や婚姻前の資金による株式は基本的に特有財産ですが、配当の再投資や婚姻後の買付については共有財産と見なされる可能性があるため要注意です。

自分にとって思い入れのある株式でも、法的には分与対象となる部分もあるかもしれません。納得のいく離婚を実現するためにも、専門家への相談を強くおすすめします。

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