駐車場内で自車が停車中に後方から追突された場合でも、保険会社から「任意保険は使えず自賠責保険で対応します」と案内されることがあります。一見すると納得しにくいこの対応の背景には、事故の性質や保険の制度的な理由があるのです。本記事では、任意保険が使えないとされるケースや、その後の正しい補償の受け方について詳しく解説します。
任意保険と自賠責保険の違いとは?
まず基本として、自動車保険には法律で加入が義務付けられた「自賠責保険」と、任意で加入する「任意保険」の2種類があります。
自賠責保険は被害者救済のための最低限の補償(傷害120万円までなど)を目的としており、対人賠償のみが対象です。一方で任意保険は、対物賠償や加害者側の賠償補助、一括対応など、より柔軟で広範な補償が可能になります。
なぜ「任意一括対応不可」になるのか?
「任意一括対応」とは、本来は自賠責で処理される通院費等も加害者側の任意保険会社が立て替えて対応し、あとから自賠責へ請求する仕組みのことです。
ただし、事故の過失割合や状況、治療費の軽微さなどにより、保険会社が「一括対応の必要なし」と判断することがあります。とくに停車中の車に接触したような明らかに加害者100%の事故で、かつ軽傷で済んでいる場合に多く見られます。
自賠責保険での補償を受ける流れ
- まず病院で診断書を取得し、診療明細・領収書を保管
- 加害者の保険会社に「自賠責請求用紙(被害者請求)」を依頼
- 必要書類をそろえて保険会社へ送付する(郵送または持参)
これにより、自賠責の限度額内で通院費・交通費・慰謝料が支払われます。ただし、一時的に立て替えが必要となるため、経済的負担が発生する点には注意が必要です。
実例:駐車場での軽い接触事故と保険対応のケース
ある40代女性が、スーパーの駐車場で停車中にバックしてきた車に接触されました。むち打ち症状が出たものの大きな外傷はなく、加害者側保険会社から「任意ではなく自賠責で対応します」と言われました。
後日、必要書類を準備して自賠責保険に被害者請求を行い、通院費約3万円と慰謝料が支払われました。事故内容が軽微な場合、こうした対応は珍しくありません。
任意一括を希望する場合にできること
どうしても立て替えが難しい、または通院頻度が高くなる見込みがある場合は、加害者本人に依頼し、任意保険会社へ再度一括対応の要望を出してもらう方法があります。
また、通院先によっては「自賠責対応に慣れている病院」もあり、立て替え不要で診療を受けられることもあります。
まとめ:事故の性質で保険対応は変わる。焦らず適切な手続きを
任意保険の一括対応が使えないからといって不当な扱いとは限りません。保険制度の仕組みを理解し、自賠責での補償手続きをしっかり行うことで、必要な治療費や慰謝料はカバーされます。
事故直後は不安も多いですが、まずは冷静に診断・書類準備を進めることが、補償をしっかり受けるための第一歩です。