外国人が日本で事件に関与しながらも不起訴処分となった場合、その後どのような処遇になるのかについて関心が高まっています。特に「国外退去になるのか」「再入国はできるのか」「記録はいつまで残るのか」といった疑問は、多くの人にとって不透明な領域です。この記事では、入管法・刑事手続・出入国管理の観点から解説します。
不起訴処分とは?その意味と背景
不起訴とは、検察官が「起訴(=裁判にかけること)」を見送る処分です。不起訴には主に以下の3種類があります。
- 嫌疑なし(証拠が不十分)
- 嫌疑不十分(違法性の判断が困難)
- 起訴猶予(犯罪の事実はあるが社会的影響などから見送る)
外国人であっても、日本人と同様に検察の判断により不起訴となることがあります。
不起訴でも強制退去になる可能性がある理由
不起訴処分になったからといって、必ずしも日本に留まり続けられるとは限りません。なぜなら、入国管理局(入管)には独自の判断権限があるからです。
たとえば、以下のようなケースでは不起訴でも退去強制(いわゆる「国外追放」)が検討されます。
- 在留資格に違反した行為(オーバーステイ、資格外活動など)
- 風俗営業関係や詐欺事件など、社会的影響が大きいと判断された場合
つまり、刑事処分がなくても、入管法違反に該当する行為があれば退去処分の対象になりうるのです。
再入国は可能か?記録の保持期間と審査基準
再入国については、過去の在留歴・トラブル歴が大きな判断材料になります。一般的には、在留資格の審査時に過去の記録がチェックされます。
不起訴処分自体は「犯罪歴」として扱われませんが、入管の内部記録には残ります。そしてこの記録がある間は、ビザ発給が却下されたり、入国審査で足止めされるリスクが高くなります。
また、情報の保存期間には明確な規定はなく、個別判断となるため、「5年経てばOK」といった一律のルールはありません。
実際に起こりうるパターン別の対応
以下に、実際に想定されるパターンをいくつか紹介します。
- 不起訴+オーバーステイあり:退去強制。再入国には原則5年の上陸拒否(ただし永住者などは例外も)
- 不起訴+在留資格違反なし:記録は残るが即退去はない可能性あり。ただし更新や再入国時に不利になる
- 日本での就労資格あり+軽微な違反:起訴猶予で済めばそのまま在留継続も可能性あり
再入国を目指すなら:弁護士・行政書士のサポートが鍵
一度トラブルに関与してしまった場合、将来の再入国を見据えて記録の扱いや上陸申請の戦略を専門家と相談することが重要です。ビザ・入管専門の弁護士や行政書士は、記録の開示請求や再申請時の補足書類作成などのサポートを行っています。
また、国によっては日本の警察や入管からの情報提供を元に自国政府がビザ申請時に不利に扱うこともあるため、慎重な対応が求められます。
まとめ:不起訴でも安心できない。入管法の視点を忘れずに
外国人が不起訴処分となった場合でも、それが日本での在留資格や将来の再入国に何らかの影響を与える可能性は否定できません。刑事処分が下されなかったとしても、入管には独自の判断基準があり、退去や再入国制限が課されるケースもあります。
今後のビザ取得や在留活動を見据え、法的助言を受けながら慎重に対応することが大切です。