家族信託を活用した安心の資産管理とは?認知症や将来への備えを考える

高齢期を迎えた夫婦にとって、将来の資産管理や家族間の信頼を維持しながら財産をどう守るかは非常に重要なテーマです。特に認知症リスクや、配偶者・子どもとの関係を考慮した家族信託の設計は、多くの家庭にとって現実的な課題となっています。本記事では、家族信託の仕組みや活用方法、トラブルを防ぐためのポイントについて解説します。

認知症になった場合、配偶者でも預金は自由に使えない?

日本の金融機関では、本人の同意が確認できない状態(例:認知症)になると、配偶者や家族であっても口座から預金を引き出すことは原則できません。これは、金融機関が不正出金やトラブルを防ぐために本人確認を厳格に行うためです。

つまり、たとえ配偶者であっても、認知症が進行した時点で本人の意思確認が取れない場合は、財産管理に制限が生じるという現実があるのです。この点からも、事前の家族信託契約は非常に有効です。

家族信託で子どもが受託者になった場合の権限

家族信託契約では、委託者(夫)が受託者(子)に財産の管理権限を託します。契約締結時点でその権限は発効しますが、実際の管理運用においては、契約内容によって「指示型(夫が主導)」や「完全委任型(子どもが主導)」など柔軟に設計できます。

したがって、契約書の中で「夫が元気なうちは意思決定権を保持する」と明記すれば、形式的な権限は子に移っても、実務では夫の意思が優先される構造が可能です。

妻が関与できないケースとその回避方法

夫と子の間で信託契約が交わされた場合、法的には妻は信託契約に関与する権利を持ちません。つまり、子どもが信託財産を運用しても、妻の意見は法的拘束力を持たないことになります。

これを回避するには、最初から妻を「信託監督人」や「受益者代理人」として契約に組み込んでおくのが効果的です。これにより、子が一方的に財産を運用することを防ぎ、妻がチェック機能を持つことができます。

信託契約に妻+子ども2人で関与する方法

もちろん、複数の人物を受託者に設定することは可能です。夫(委託者)の意思で、妻と子どもたちを共同受託者にしたり、意思決定順位を定めた契約を組むことができます。

たとえば、「夫が認知症になった場合は、まず妻が財産を管理し、妻が亡くなったり判断能力を失ったときは子どもたちが管理を引き継ぐ」という段階的な信託構造を設計することが可能です。このような契約では、家族間の意見や関係性を反映した柔軟な設計が求められます

信託契約に制限条項を設けることはできるか

はい、信託契約では受託者の行動に対して制限条項を設けることが可能です。よくある例としては。

  • 「生活費・医療費などに限って信託財産の使用を認める」
  • 「金融商品や株式への投資は禁止」
  • 「不動産の売却は受益者の同意が必要」

このように、目的外の使用を防ぐガードレールを契約上に設けることができるため、安心して信託を活用できます。

まとめ:家族信託は自由度の高い資産管理ツール

家族信託は、将来のリスクや家族間の信頼関係を考慮した上で設計する柔軟性の高い制度です。認知症対策、妻の関与、受託者の制限、段階的な継承など、多様なニーズに応じてオーダーメイドで設計できます

信頼できる司法書士や弁護士と相談しながら、自分たちの価値観や希望を丁寧に反映した契約を作成することで、安心できる資産管理が実現できます。

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