警察が逮捕や書類送検を行ったにもかかわらず、検察が起訴を見送ることがあります。このような場面に直面すると、「警察が間違っていたのでは?」と感じる人も多いかもしれません。しかし、検察の不起訴判断には明確な基準と背景があります。本記事では、不起訴となる主な理由や判断基準、具体例を交えて解説していきます。
不起訴とは何か?
不起訴とは、検察官が「裁判にかけない」と判断することを指します。警察が事件を捜査し、容疑者を送検しても、最終的に起訴するかどうかは検察官が判断します。
この判断は、刑事訴訟法第248条などに基づき、証拠や社会的影響、処罰の必要性などを総合的に考慮して行われます。
検察が不起訴にする主な理由
- 証拠不十分:起訴しても有罪にできる見込みがない場合。
- 犯罪の成立が疑わしい:法律的に構成要件を満たさない可能性があるとき。
- 被害者との示談:特に暴行や傷害、交通事故などで、被害者が処罰を望まないとき。
- 初犯や軽微な違反:社会的制裁が既に十分に与えられていると判断されるとき。
これらは、検察が起訴に至らない理由として典型的です。特に交通事故や軽微な暴力事件では示談成立による不起訴が多く見られます。
不起訴だからといって警察が間違っていたとは限らない
逮捕や送検の段階では、警察は「容疑がある」と判断して行動します。しかし、裁判で有罪となるには、「合理的な疑いを超える証明」が必要です。
そのため検察は、裁判で勝てる証拠の質や量がそろっているかを冷静に見極め、不起訴とすることがあります。これは、捜査ミスというよりは、制度上の役割分担と見るのが適切です。
具体例:証拠不十分による不起訴の実例
ある暴行事件では、加害者とされた人物が現場にいたものの、証言に矛盾が多く、防犯カメラ映像も不鮮明でした。警察は容疑者として送検したものの、検察は「有罪立証が難しい」として不起訴と判断しました。
このケースのように、疑わしきは被告人の利益にという原則が刑事裁判では強く働きます。
「起訴猶予」という不起訴の一種
刑事処分を下すには相応の理由が必要ですが、情状酌量により「今回は起訴を見送る」という判断もあります。これが「起訴猶予」です。
たとえば未成年や初犯者、家族の監督がある場合などに適用されることがあり、再犯防止の観点から柔軟な対応とされています。
まとめ:検察の不起訴判断は慎重かつ法的根拠に基づいている
検察が不起訴とするのは、単なる感情や主観ではなく、証拠や社会的背景を総合的に判断した結果です。警察が逮捕・送検したからといって、必ずしも起訴すべきとは限りません。
刑事司法制度は、冤罪を防ぐための慎重な仕組みが組み込まれています。不起訴だからといって警察が間違っていたと決めつけるのではなく、それぞれの役割と判断基準を理解することが重要です。