会社法の世界では、「議事録の閲覧」が株主の重要な権利の一つとして位置づけられています。特に株主総会の議事録は透明性を担保するため、原則として株主であれば閲覧が認められています。しかし、取締役会や監査役会などのその他の会議については、同じように簡単に閲覧できるわけではありません。本記事では、各種議事録の閲覧可否について、法的な根拠と実務的な対応を詳しく解説します。
株主総会議事録の閲覧はなぜ可能なのか
会社法第318条では、株主は株主総会議事録を閲覧・謄写することができると明記されています。この規定は、会社経営の透明性を確保し、株主の監視機能を強化するために設けられています。
例えば、株主が議決権行使の内容や取締役の発言を確認したい場合、議事録の閲覧は極めて有効な手段となります。
取締役会議事録・監査役会議事録はどうか
会社法では、取締役会や監査役会の議事録について、株主が当然に閲覧できるという規定はありません。これらの会議体は業務執行や監督に関する内容を扱うため、内部情報の秘匿性が高く、基本的には非公開です。
ただし、例外として裁判所の許可を得た場合や、株主代表訴訟などの手続の一環として閲覧請求が認められることがあります。
裁判所の許可が必要になるケース
会社法第433条に基づき、株主は正当な理由がある場合に限り、裁判所に議事録の閲覧を申し立てることが可能です。ここでの「正当な理由」とは、例えば不正取引の有無を調査するためなど、株主の利益保護と会社の健全経営の維持に資する理由です。
実務では、裁判所に対して申し立て書を提出し、相当な証拠を添えて理由の正当性を主張する必要があります。
議事録閲覧に関する裁判例と注意点
過去には「取締役会議事録の閲覧を求めたが却下された」事例や、「訴訟中の調査目的で閲覧が許可された」判例もあります。閲覧が認められるか否かは、個別の事情と裁判所の判断に左右されます。
また、上場企業であっても、内部統制上の理由や個人情報保護の観点から、議事録の一部がマスキングされることもあります。
まとめ:閲覧できる議事録とできない議事録の違い
株主総会議事録は、株主の法的権利としていつでも閲覧可能ですが、それ以外の会議体に関する議事録は、原則として閲覧できません。ただし、正当な理由と裁判所の許可があれば、閲覧が認められる可能性もあります。
会社運営の透明性と情報の非公開性のバランスを理解し、必要な場面では法的手続きを踏むことが重要です。企業にとっても、適切な議事録の管理と対応が求められる時代となっています。