苗のラベル違いによる損害は法的に補償される?ガーデニング愛好家が知っておくべき消費者保護の基礎知識

ガーデニングは手間と時間、そして愛情をかけて楽しむ趣味です。特に苗から育てる花は、その成長を見守ることで得られる喜びが格別です。しかし、注文した苗と異なる品種が届いてしまった場合、購入者の手間や労力、時間はどう評価されるのでしょうか?法的な観点からこの問題を紐解きます。

苗のラベル間違いによるトラブルは少なくない

インターネット通販などで苗を購入する際、商品画像やラベル表示を信頼して注文するケースが大半です。しかし実際には、流通や生産現場の過程でラベルの付け間違いが起こることもあり、異なる品種が届くという事例は珍しくありません

たとえば「八重咲きのサーモン色」として注文したアルセアが、開花してみたら「ピンクの一重咲き」だったというようなケース。購入者は半年から一年を費やして世話をするため、その損失は金銭に換算しにくい精神的ダメージも含みます。

法律上の考え方:不完全履行と損害賠償

このようなトラブルは法律上、契約不適合責任(民法第562条)に該当する可能性があります。簡単に言えば、「注文どおりの商品を引き渡さなかったこと」による損害です。

本来は苗の交換や代替品の提供が望ましい対応ですが、返金のみで済まされてしまうことも少なくありません。このようなケースでは「信頼利益の侵害」または「履行利益の損失」として、苗代金以上の損害賠償が主張できる場合もあります。

実際に認められる損害とは?

損害賠償請求を検討する場合、実際に法的に認められる損害は次のようなものが考えられます。

  • 購入代金(既に返金済の場合は対象外)
  • 土壌改良や支柱設置などにかかった実費
  • 交通費や通信費などの付随的費用
  • 精神的苦痛に対する慰謝料(ただしかなり限定的)

ただし、苗の育成は個人差や環境差が大きいため、実費以外の精神的価値を損害として認めてもらうのは困難です。

請求先は販売店か種苗会社か

苗を購入した相手が楽天などの通販ショップである場合、直接の契約関係はその販売店になります。種苗会社が原因であっても、販売店が契約不適合の責任を負います。

販売店が種苗会社名の開示を拒む場合でも、契約上は購入者と販売店との関係になるため、損害賠償請求の相手も販売店になります。

実際に訴訟を起こす場合の注意点

少額訴訟(60万円以下)で訴えることは理論上可能です。ただし、費用や労力、証拠収集の手間を考えると、現実的にはおすすめできないケースも多いです。

たとえば、以下のような書類や記録が必要になります。

  • 注文時のスクリーンショットや商品ページ
  • 届いた苗と開花した花の画像
  • ラベル写真と育成記録
  • 返金ややり取りの履歴

また、相手方が個人経営の小規模ショップである場合、誠実に対応してもらえないリスクもあります。

消費者庁やADR機関への相談も選択肢

法的措置に踏み切る前に、消費生活センターや国民生活センター、あるいはADR(裁判外紛争解決機関)に相談するのも有効です。事業者との間に入って、話し合いや解決を図ってくれる中立的な機関です。

まとめ:花の品種違いは小さな問題に見えて大きな失望

苗の品種違いは、育成者にとって大きな精神的ダメージとなる問題です。返金だけでは済まされないと感じるのは当然のこと。ですが、法的に賠償を求めるには一定のハードルもあります。

契約不適合責任という観点で、まずは丁寧に事業者に再交渉をし、難しければ消費者庁やADR機関への相談も検討してみてください。

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