民事裁判で訴えられた際、第1回口頭弁論期日に出席せず、答弁書に「追って提出する」と書いて出すだけで擬制陳述とされるケースがありますが、それは本当に安全なのでしょうか?この記事では、擬制陳述の仕組み、適切な対応、想定リスクまでを詳しく解説します。
擬制陳述とは?法的な意味と適用要件
民事訴訟法第159条第2項により、第1回口頭弁論期日前に答弁書を提出していれば、被告が出廷しなくても陳述したものと見なされることがあります。これを「擬制陳述」と呼びます。
ただし、その答弁書が「訴状の内容に対する認否」を含まない場合、裁判官によっては擬制陳述として認めない判断がされることもあり得ます。
「追って提出する」だけの答弁書は有効か
実務上、「追って提出する」「後日詳述する」と書かれた答弁書は裁判所により認められるケースもありますが、訴状の内容に対して何も認否していない場合は不備とされ、擬制陳述が成立しない恐れがあります。
つまり、最低限「請求の趣旨に対する認否(例えば、請求棄却を求める)」が明記されていないとリスクがあります。
出廷しなかった場合のリスク
擬制陳述が成立しないと、欠席裁判(欠席判決)となり、原告の請求がそのまま認容されるリスクがあります(民事訴訟法第158条)。
また、内容の不備を理由に裁判所から呼び出される、または訴訟の進行が不利になる可能性もあるため、初動の対応は非常に重要です。
正しく擬制陳述を活用するための書き方ポイント
- 請求の趣旨に対する明確な反論を含める(例:「請求棄却を求める」)
- 訴状の事実に対する「認否」を明記(例:「第1項は否認する、第2項は認める」など)
- 書式は簡略でもよいが、実質的な主張が必要
また、答弁書のひな型を使用する場合も、空欄や形式的記述だけでなく、具体的な反論の意志を記載すると安心です。
弁護士相談や司法書士活用も検討を
不慣れな方が答弁書を単独で作成することはリスクを伴います。特に金銭請求訴訟や高額請求の事案では、弁護士の助言を受けて答弁書を作成することが望ましいです。
簡易裁判所であれば、認定司法書士による代理対応も可能です。
まとめ
「追って提出する」と書いただけの答弁書では、擬制陳述が成立しない可能性があります。最低限「請求棄却を求める」旨や、認否の記載がある答弁書を提出することが重要です。
初回期日に出廷せず答弁書だけで済ませる場合でも、形式ではなく中身が問われるため、正しい書き方を理解し、必要なら専門家のサポートを受けるようにしましょう。