ストーカー規制法に基づく警告が警察から出された段階で、当事者間で示談や取り下げを希望する声が出ることは少なくありません。しかし、警告が発せられた状況で本当に示談が可能なのか、弁護士を通じて交渉することが適切なのかは、法的知識と慎重な判断が求められます。この記事では、警告段階における法的性質や示談の可否、弁護士の役割、実際の対応方法などを詳しく解説します。
ストーカー規制法における「警告」とは何か
ストーカー規制法における「警告」は、都道府県公安委員会(実務上は警察署)が加害者に対して「特定行為をやめなさい」と命じる行政的な措置です。この段階ではまだ刑事罰は科されておらず、いわば「注意勧告」に近いものです。
ただし、この警告に従わず同様の行為が続いた場合、「禁止命令」や「逮捕」といった次のステップに進む可能性が高まるため、無視することはできません。
警告段階で示談は可能なのか?
警告段階においても、当事者同士が示談を希望する場合、民事的な意味での示談交渉を行うことは可能です。ただし、これは被害者の自由意思に基づくものであり、強要や誘導は絶対にNGです。
また、警察がすでに介入している場合、示談が成立しても警察の判断によっては警告や禁止命令の手続きを継続する可能性があります。つまり、示談=警告の取り下げではないという点に注意が必要です。
弁護士を通じた示談交渉の利点と注意点
弁護士を通じて示談の申し出を行うことは、法的な整合性を確保し、当事者間の不安を減らす上でも有効です。特にストーカー事案では、加害者側からの直接接触が被害者に強い不安を与える可能性が高く、代理人を立てることが望ましいとされています。
ただし、弁護士であっても被害者が拒否した場合は示談交渉を進めることはできません。また、一部の弁護士は「警告段階では示談は難しい」と判断することもあり、対応が分かれるのが現状です。これは各弁護士の経験やリスク判断によるものであり、一概にどちらが正しいとは言えません。
実際の対応事例と交渉の流れ
ある事例では、警告後すぐに弁護士を通じて「誓約書の提出」と「接触行為の停止」を約束することで、被害者側が示談に応じ、警察にもその内容が報告されました。この結果、警察は「問題が解消された」と判断し、それ以上の介入は行われませんでした。
ただし、別の事例では被害者が「示談したくない」と明確に拒絶し、警察もそれを尊重して禁止命令の申立てを行ったケースもあります。このように、結果はケースバイケースです。
示談を試みる場合の重要なポイント
- 弁護士を通じて冷静かつ誠実な対応を心がける
- 被害者の意思を尊重する(強制は絶対NG)
- 書面化された誓約書や謝罪文などの提出が効果的な場合もある
- 警察に対して示談の進行状況を適切に報告する
- 再発防止の具体的な策を明示する
また、弁護士の選定も重要で、ストーカー案件に詳しい法律事務所を選ぶとより効果的です。
まとめ:警告段階での示談は可能だが慎重に
ストーカー規制法の「警告」段階においても、法的には示談を試みることは可能です。しかし、それが警告の取り下げに直結するとは限らず、被害者の意思と警察の判断が重視される点を忘れてはなりません。
弁護士を通じて誠実かつ丁寧に対応することで、被害者の不安軽減や円満解決に近づく可能性はありますが、過度な期待は禁物です。状況に応じて慎重に進めることが、最善の結果につながるでしょう。