高圧ガス設備における弁類点検の基本と実施基準のポイント

高圧ガスの安全な取り扱いには、配管やバルブ(弁類)の点検が欠かせません。日常の点検から定期的な保守管理まで、トラブルを未然に防ぐための基準や実務上の注意点を把握しておくことは、現場の信頼性と安全性を大きく左右します。

高圧ガス保安法と点検の必要性

高圧ガス保安法により、貯蔵設備や供給設備などに使用される弁類は、定期的な点検と保守管理が義務付けられています。これには、弁の外観、操作性、漏洩の有無などが含まれます。

点検の頻度や方法は、事業所の保安規程や各種ガイドラインに基づいて設定されるのが一般的です。

弁類点検の主なチェック項目

  • 外観確認:腐食、サビ、破損、変形の有無を目視で確認。
  • 操作性:開閉がスムーズに行えるか、異音がしないか。
  • 漏洩点検:石鹸水や検知器を用いた漏洩確認。
  • グランド部の確認:増締めしろや摩耗具合を測定。

特にグランド増締めしろが1〜2mm以下である場合、グランドパッキンの交換を検討する目安とされる現場もあります。

グランド増締めしろの具体的な目安

グランド部とは、弁のステム(軸)が外部に突き出す部分で、パッキンにより気密を保っています。長年使用すると摩耗や経年劣化が起こり、気密性が低下します。

例えば、目安として3mm以上の増締めしろが必要であり、それを下回るとパッキンの限界とみなされ、交換が推奨されるケースがあります。これはあくまで目安であり、弁の種類やメーカー仕様により異なります。

目視点検で注目すべき劣化のサイン

サビや腐食の発見は重要な安全シグナルです。白サビ(亜鉛腐食)や赤サビ(鉄の腐食)が発生している場合、構造材の劣化が進行している可能性があるため、早期の補修や部品交換が望まれます。

また、塗装剥離や結露痕、変色なども劣化の兆候として見逃さないようにしましょう。

定期点検の頻度と報告書の作成

一般的に、高圧ガス設備の弁類点検は「月次点検」「年次点検」の2段階で実施されます。頻度は設備の重要度や使用状況によって異なります。

点検結果はチェックリストや写真付き報告書に記録し、過去の履歴と比較することで劣化傾向を見える化できます。

メーカー基準と実務の違い

弁類にはメーカーが定めたメンテナンス基準があります。特にLNG・LPG・高圧空気・窒素などの用途では、圧力や温度条件が厳しく、基準を超えた使用は重大事故につながる恐れがあります。

そのため、現場では実際の運用状況に応じて、経験的にリスクを見極めた点検基準を運用することもあります。

まとめ:高圧ガス設備の弁類点検はリスク管理の要

弁類の点検は、高圧ガス設備の中でも最も重要な保守項目の一つです。グランド部の増締めしろや目視確認、操作性などを通じて、安全性を保つことができます。

現場では、メーカー基準と併せて独自の点検フローを策定し、事故やトラブルを未然に防ぐことが重要です。定期的な点検を怠らず、安全・安心なガス利用を実現しましょう。

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