日本の裁判制度には、家庭裁判所・地方裁判所・簡易裁判所・高等裁判所・最高裁判所といった複数の裁判所が存在します。それぞれに役割があり、扱う事件の種類も異なります。この記事では「家庭裁判所で刑事裁判が行われることはあるのか?」という点に着目し、その仕組みや例外、家庭裁判所の機能について詳しく解説します。
家庭裁判所とは何を扱う裁判所か?
家庭裁判所は、家庭に関する問題や未成年に関する事件などを専門に扱う裁判所です。主な取り扱いは以下の通りです。
- 家庭内の問題(離婚、親権、相続など)
- 少年事件(20歳未満の非行)
- 後見や遺言の審判など民事系の家事事件
つまり、原則として家庭裁判所は一般的な刑事事件を扱う場所ではありません。
少年事件における家庭裁判所の特別な役割
例外的に、家庭裁判所が関わる「刑事に類する手続き」が存在します。それが「少年事件」です。20歳未満の少年が非行を起こした場合、通常の刑事裁判ではなく、まず家庭裁判所が事件を審理します。
この審理は「少年審判」と呼ばれ、刑罰を科すのではなく、保護処分を中心とした教育的対応が主眼です。
検察官送致(逆送)による刑事裁判への移行
家庭裁判所での審判の結果、重大事件で刑事責任能力があると判断された場合には、「検察官送致(逆送)」が行われ、地方裁判所に送られて通常の刑事裁判となります。
たとえば、殺人や強盗致傷など重大事件を起こした17歳以上の少年が、家庭裁判所から逆送され、地方裁判所で刑事裁判にかけられる事例があります。
家庭裁判所で「刑事裁判」が行われることはない
家庭裁判所で行われるのは「審判」であって、厳密には刑事裁判ではありません。したがって、家庭裁判所で一般成人に対する刑事裁判が行われることはありません。
裁判官が一人で行う「家事審判」や、合議体で行うこともある「重大な少年事件の審理」などが家庭裁判所の業務範囲となります。
他の裁判所との役割の違い
以下のように裁判所の役割は分かれています。
裁判所 | 主な取り扱い事件 |
---|---|
家庭裁判所 | 少年事件、家庭内の民事紛争、後見など |
地方裁判所 | 重大な刑事事件、民事事件(請求額大) |
簡易裁判所 | 軽微な刑事事件や民事事件(請求額60万円以下) |
このように、家庭裁判所はあくまでも家事事件・少年事件の専門機関です。
まとめ:家庭裁判所での刑事裁判の可否について
結論として、家庭裁判所では刑事裁判は行われません。ただし、少年事件に限り、刑事処分に準ずるような手続き(少年審判)が行われることがあります。重大事件の場合は家庭裁判所から地方裁判所へ送致され、通常の刑事裁判が開かれます。
裁判制度を理解することは、法的手続きを正しく把握し、自身や家族の権利を守るためにも非常に重要です。