産業現場で使用される化学物質の中には、法令により特別な管理が求められるものが多数あります。特に作業者の健康被害や長期的なリスクに関わる物質は、特別管理物質として扱われ、適切な対応が求められます。本記事では、ナフタレンを含む製品に関して、どのような濃度条件で法的義務が発生するのかを詳しく解説します。
特定化学物質と特別管理物質の違い
「特定化学物質」とは、労働安全衛生法施行令別表第3に定められた物質で、健康障害の恐れがあるものです。これに対して「特別管理物質」は、特定化学物質のうちでも特に厳しい管理が必要な区分であり、取扱い、保管、記録、教育訓練などの義務が強化されています。
ナフタレンはこの「特定化学物質(第2類)」かつ「特別管理物質」に該当し、業務で取り扱う場合には一定の管理措置が求められます。
ナフタレンの含有濃度と記録保存義務の関係
ナフタレンを含む製品に関して、特別管理物質としての扱いを受けるかどうかの判断基準には「含有濃度」が重要な要素となります。労働安全衛生法に基づく政令では、1%以上の含有率がある場合に、特定化学物質としての取り扱いが義務付けられるケースが多いです。
したがって、ご質問のシーリング剤にナフタレンが0.1〜1%含まれている場合、1%未満であれば政令に基づく特別管理対象からは外れる可能性が高いです。
特別管理物質でも含有濃度による適用除外はあるのか?
はい。特別管理物質にも、含有率が低い場合は法規制の対象外になる場合があります。具体的には、「政令に定める含有濃度未満の混合物」は対象外とされているため、ナフタレンのような物質もその原則に準じます。
ただし、SDS(安全データシート)上に記載されている内容や、製品のGHS分類、作業環境中の暴露評価結果なども総合的に判断材料となるため、個別製品ごとに詳細な確認が必要です。
30年記録保存の対象となるケース
労働安全衛生法第100条では、特別管理物質を取り扱った作業に関して、30年間の記録保存義務があります。ただし、これも含有濃度が一定の基準(例:1%以上)を超えない場合、対象外と判断されることが多いです。
しかし、ナフタレンは「発がん性」があるとされる化学物質であるため、使用時の作業環境測定やリスクアセスメントの記録を保管しておくことは、法的義務を超えても推奨されます。
SDSとGHS表示から読み取る判断のポイント
ナフタレンを含む製品のSDSには、GHS分類に基づく危険性や適用法令、必要な管理措置が記載されています。そこに「特別管理物質」「労働安全衛生法対象」などの明示があるかを確認しましょう。
また、GHSラベルに「危険」「注意」などの表示がある場合は、作業者への教育や保護具の着用義務が生じる可能性もあります。
まとめ:ナフタレン含有製品の取り扱いで重要な視点
ナフタレンを含むシーリング剤については、含有濃度が1%未満である場合、原則として労働安全衛生法における特定化学物質や特別管理物質の適用対象から外れることが多いです。ただし、作業者の安全を守る観点から、SDSを確認し、必要に応じた記録保存や管理措置を講じることが重要です。リスクを最小限に抑える運用が、職場全体の安全と信頼につながります。