要介護1と認知機能低下が争点になる贈与契約の有効性と法的対応

高齢の親が不動産や財産の名義変更を行った際、「本当に本人の意思だったのか?」という点が法的に問題になることがあります。特に要介護1で「認知機能の低下」が記録されていた場合、家族間の贈与や契約に大きな影響を及ぼす可能性があります。

要介護認定と認知機能の評価とは?

介護保険制度における要介護1は、日常生活に一部介助が必要な状態を示しますが、認知症が重度であるとは限りません。市町村による認定調査や主治医意見書には「認知機能」の欄があり、記載内容が「やや低下あり」と評価された場合でも、法的な判断ではまだ意思能力があるとされることが多いです。

一方で、明確に「意思判断に支障あり」などと記載されていた場合、それを根拠に「意思能力がなかった」として契約の無効を訴える余地が出てきます。

不動産贈与と意思能力の関係

贈与契約は本来、双方の合意に基づいて行われます。被贈与者が兄であり、贈与者である父が「意思能力を欠いていた」と主張する場合は、家庭裁判所で贈与無効の主張が可能です。ただし、その場合でも立証責任(証拠を示す責任)は、無効を主張する側にあります。

意思能力の有無は以下のような証拠で判断されます。

  • 要介護認定調査の記録
  • 医師の診断書(特に認知症や軽度認知障害の記録)
  • 当時の会話録音や映像
  • 贈与契約の手続き状況(専門家の介在有無)

「他の兄弟に無断で名義変更」は問題になるか?

法的には、親が自身の財産を誰に贈与するかは自由ですが、遺産分割の公平性や事実上の遺留分侵害が問題になる場合もあります。今回のケースで特に注目すべき点は、「父に意思能力がなかった可能性があるか」です。

他の兄弟の同意がなかったこと自体は贈与契約の無効とはなりませんが、親の判断能力が不十分だったことを証明できれば、「意思無能力による贈与無効」や「不当利得返還請求」などを検討できます。

裁判で勝てる可能性はあるか?

以下のような条件が整っていれば、裁判で勝てる可能性があります。

  • 要介護認定で「認知症による判断困難」と明記されている
  • 医師による「意思能力なし」の診断記録がある
  • 贈与契約が不自然に急いで実施された
  • 司法書士や公証人が関与せず、兄が単独で手続きを主導

ただし、要介護1の認定だけでは「意思能力が欠けていた」とまで判断されにくいため、医療的・法的な証拠が非常に重要になります。

専門家への相談と今後の対応

相続に強い弁護士や、成年後見制度に詳しい司法書士に早めに相談しましょう。過去の経緯を記録した書面やメール、医師の意見書、要介護認定時の調査票などを持参すれば、より具体的な法的判断を仰ぐことができます。

また、可能であれば「任意後見契約」や「信託制度」など、親の財産管理を事前に整備しておくことも有効です。

まとめ

要介護1の認定と「認知機能の低下」の記述だけでは、贈与契約の無効を証明するにはやや弱い側面があります。ただし、医師の診断や当時の状況に応じては、裁判で勝つ余地は十分にあります。

証拠収集と早めの専門家相談を通じて、法的に適切な対応を進めましょう。

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