刑事事件の報道などで耳にする「現行犯逮捕」「緊急逮捕」「通常逮捕」などの用語。これらはそれぞれ逮捕の法的な根拠と手続きを意味しています。特に現場での逮捕判断は、警察官にとっても非常に重要な法的判断となります。本記事では、逮捕の種類とその適用基準、実際にあり得るシナリオをもとに解説していきます。
現行犯逮捕とは?
現行犯逮捕は、犯罪が行われている現場、または直後に犯人を発見した場合に、令状なしでその場で行うことができる逮捕です(刑事訴訟法213条)。この場合、一般人であっても逮捕が可能であるという特徴があります(私人による現行犯逮捕)。
たとえば、万引き直後の商品を持って店外に出た人物に警備員が声をかけ、その場で逮捕する場合などがこれに該当します。
緊急逮捕とは?
緊急逮捕は、重大犯罪の被疑者で、逮捕状を取得する時間的余裕がないときに、一定の要件のもと行われる逮捕です(刑事訴訟法210条)。この場合、事後に逮捕状の請求と裁判所の許可が必要です。
例えば、殺人事件の直後、被疑者を特定できていて、すぐに逃亡する可能性が高い場合などに適用されます。
特殊詐欺のケースから見る適用判断
今回のような事例では、警察官が事前に特殊詐欺で手配中の人物に似た者を発見し、行動を注視。容疑者が被害者宅に立ち入り、数分後に出てきた後の所持品にキャッシュカードが含まれていた、さらに自白もあったという状況です。
このようなケースでは、「準現行犯逮捕」に該当する可能性が高いとされます。刑事訴訟法212条により、「犯罪直後に逃走するところを発見された者」なども現行犯とみなされ、現行犯逮捕が認められます。
たとえば。
- 犯行直後である(被害者宅に入ってすぐ出てきた)
- 被害品が現に手元にある
- 本人が自白している
以上の状況から、現行犯性の要件は満たされていると判断できます。
緊急逮捕が該当する場面とは?
もし、容疑者が自白せず、被害品も所持していないままに逃走の恐れがあり、かつ令状請求の時間的余裕がない場合などは緊急逮捕の適用が考えられます。
しかし、今回のケースのように、犯行直後で、物証と自白があり、しかもその場での対応である場合には、現行犯(準現行犯)逮捕が法的にも妥当とされるでしょう。
まとめ:逮捕種別の理解は警察実務にも不可欠
逮捕の正当性は、刑事裁判の手続きに大きな影響を与えるため、警察実務では法的根拠に基づいた逮捕種別の判断が不可欠です。今回のような事例では、現行犯逮捕(準現行犯)がもっとも適切と考えられます。
法律を理解することで、刑事手続きや事件のニュースに対する見方も深まり、社会的な議論に対してもより建設的な視点が持てるようになります。