建設業における契約日と工期開始日の適切な関係とは?建設業法の観点から解説

建設業において、元請と下請の契約に関わる「契約日」と「工期開始日」の関係は、法的にも実務的にも重要な意味を持ちます。特に契約日から工期開始日までの期間が長く空いていても問題はないのか、不安に感じる事業者も少なくありません。今回はこの点について、建設業法を踏まえてわかりやすく解説します。

契約日と工期開始日は異なっても問題ないのか

結論から言えば、契約日と工期開始日が異なっていても、法的には問題ありません。例えば、契約日が6月1日で、工期開始日が8月1日というケースでも、建設業法上の違反とはなりません。

実際の現場では、契約締結後に準備期間を設けることは一般的であり、発注者側の工程や資材手配、施工計画との調整のために一定の期間を空けることは珍しくないためです。

建設業法で求められる契約書の内容とタイミング

建設業法第19条では、請負契約の締結時に、契約書を作成し、双方で署名または記名押印することが求められています。加えて、契約書には以下の事項の記載が必要です。

  • 工事の名称および内容
  • 請負代金の額
  • 工期の開始日と終了日
  • 支払条件

つまり、工期の開始日を契約日以降に設定すること自体に問題はなく、むしろ「事前に契約を締結し、内容を明確化する」ことが法的に重視されているのです。

工期開始日が先すぎる場合のリスクとは?

一方で、契約日と工期開始日があまりにも離れている場合、現実的には以下のようなリスクも発生します。

  • 経済情勢の変動による資材価格や人件費の変化
  • 契約条件が実情と乖離する可能性
  • 元請・下請双方の認識のズレや、トラブル発生時の責任所在の不明確化

したがって、契約書に明確な工期記載があっても、長期間のブランクがある場合には覚書や再確認書類で補足するのが望ましいです。

実務上の適正な期間はどのくらい?

明確な「空けてよい期間」の規定は存在しませんが、実務的には1~3か月程度が妥当な範囲とされています。たとえば、公共工事においても契約締結後30日~60日程度で着工する例が多く見られます。

これを超える場合は、経緯や事情を文書で残しておくことで、後々のトラブル回避につながります。

注文書・注文請書の作成と保管の義務

建設業法第19条の3により、元請・下請双方は注文書・注文請書を書面で取り交わし、5年間保管することが義務付けられています。電子契約の場合でも同様に、電磁的記録として保存することが可能です。

このため、契約日と工期開始日が異なる場合には、注文書に両者を明記しておくことが重要です。

まとめ:契約日と工期開始日の乖離は問題ないが注意も必要

・契約日と工期開始日が異なることは建設業法上、問題なし
・重要なのは事前の明確な契約書の作成と署名押印
・工期までのブランクが長い場合はリスク管理として補足書類を用意
・1~3か月程度の差であれば実務上は一般的な範囲

トラブルを未然に防ぐには、「書面での明確化」と「記録の保管」が最も重要です。現場の実態と法令を踏まえたうえで、柔軟かつ慎重な対応を心がけましょう。

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