離婚後に住宅ローンを共同名義のまま維持しているケースは少なくありません。特に一方が支払いを続けていて、もう一方が亡くなった場合、その後の相続やローン支払いはどうなるのでしょうか。本記事では、元配偶者が亡くなった際の住宅ローン・相続の実務と注意点について解説します。
住宅ローンが共同名義のままの場合の基本的な扱い
住宅ローンが夫婦共同名義で契約されている場合、たとえ離婚後でもその契約は法的に有効です。つまり、離婚したとしても金融機関にとっては契約者に変わりはなく、ローンの支払い義務も原則として按分されたまま残ります。
たとえば、夫婦で50%ずつローンを負担する契約であれば、それぞれが自分の持分について支払い義務を負い続けます。
元配偶者が死亡した場合の相続関係
元配偶者(たとえば父)が死亡した場合、その持分に関する財産・債務は法定相続人に相続されることになります。相続人は通常、配偶者(いない場合)や子どもが対象となります。
ただし、相続には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つの選択肢があり、相続放棄を選べば、借金やローンを含めた一切の負債を受け継がずに済みます。
相続放棄をした場合、住宅のローンや権利はどうなる?
相続放棄をした場合、父の持分に対する法的な相続権も消滅するため、父のローン支払い義務を子どもが背負うことはありません。ただし、その分、ローン名義人の片方が不在になるため、金融機関から見れば支払責任者が一人減ることになります。
この場合、残った共同名義者(多くは母)に対し、「ローン全額の引き継ぎ」や「一括返済」などの対応を求められる可能性もあるため、金融機関との相談が必須です。
万が一に備えた具体的な対策とは?
住宅ローンの契約時に「団体信用生命保険(団信)」が付帯していれば、死亡したローン契約者分の債務は保険によって完済されます。ただし離婚後に名義を整理していない場合、団信の対象外になっていることもあるため、契約内容の確認が重要です。
また、相続放棄をするには父の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に手続きが必要であり、遅れると自動的に相続を承認したと見なされるため注意が必要です。
まとめ:専門家への早めの相談が鍵
離婚後もローンが共同名義のままの場合、元配偶者の死亡がきっかけで複雑な相続や債務処理の問題が生じます。相続放棄を選べば負債の相続は回避できますが、住宅の権利関係やローン契約への影響もあるため、事前に司法書士・弁護士・金融機関に相談して、最善の対応を準備しておくことが肝心です。