高齢者同士による交通事故は年々増加傾向にあり、特に自転車とバイクが絡む事故では過失の割合や保険の適用範囲に悩むケースが多いです。本記事では、物損事故として処理しつつも自賠責保険から治療費を請求する方法や、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
そもそも「物損事故」でも人身損害は請求できる?
交通事故には大きく分けて「物損事故」と「人身事故」があります。一般的に、人身事故として警察に届け出ることで治療費や慰謝料が支払われると思われがちですが、物損事故扱いでも自賠責保険から人身損害分の補償は請求可能です。
ただし、この場合は「人身事故証明書入手不能理由書」を添付し、事故の状況と診断書等を合わせて提出する必要があります。
物損事故として処理するメリットとデメリット
メリット:
- 警察の実況見分や再度の現場検証を省略できる
- 相手との関係を穏便に保ちやすい
- 自賠責保険で最大120万円までの治療費等が請求できる
デメリット:
- 加害者側の過失割合の記録が正式に残らない
- 任意保険会社が対応しないケースもある
- 被害者請求の手続きが煩雑になる
自賠責保険で支払われる補償の範囲
自賠責保険では、以下のような費用が補償されます。
- 治療費(通院・入院費、薬代など)
- 通院交通費
- 休業損害(日額上限あり)
- 慰謝料(通院日数×4300円または実通院日数×2×4300円のいずれか低い方)
例:通院30日、入院10日の場合 → 慰謝料は「(30×2+10)×4300円=301,000円」などとなります。
被害者請求と加害者請求の違い
事故の相手方が任意保険に加入していない場合、被害者が直接自賠責保険に請求する方法(被害者請求)をとります。この手続きはやや煩雑で、必要書類も多くなりますが、自身で動くことで確実に補償を受け取ることが可能です。
一方で、加害者が任意保険に加入しており代理で請求してくれる場合は「加害者請求」となり、手続きが簡易になります。
過失割合がある場合の注意点
自転車側にも過失がある場合、慰謝料や治療費の満額支給が難しくなる可能性があります。しかし、自賠責保険は「過失相殺なしで120万円までは支払われる」ため、安心して請求が可能です。ただし、過失割合が重くなるほど任意保険が使えない場合には回収困難になる恐れもあるため、慎重な判断が必要です。
まとめ:物損でも人身でも自賠責保険の利用は可能
・物損事故でも、自賠責保険を使えば治療費・慰謝料は支払われる
・ただし、証明書類や手続きに手間がかかるため、専門家に相談するのも有効
・相手が無職や任意保険なしでも、自賠責分は被害者請求により確保できる
状況によっては人身事故として届け出た方が有利なケースもあるため、交通事故に詳しい行政書士や弁護士に一度相談することをおすすめします。