交際中に相手にお金を貸し、その後関係が破綻して返済を求めたものの支払われないというトラブルは少なくありません。とくに感情や信頼関係が絡む中での金銭の貸し借りは、後から問題が複雑化しやすく、証拠の有無や相手の応じ方によっては法的手段の検討も必要になります。
交際中の金銭の授受は「贈与」か「貸付」か
お金を渡した行為が「贈与」とみなされるのか「貸付」なのかは、法的に大きな違いがあります。贈与であれば返還義務はなく、貸付であれば返済義務が生じます。ポイントは、返済の約束があったかどうかです。
例えばLINEやメールで「〇〇円を貸す」「後で返してね」といった文面が残っていれば、それは貸付の証拠となります。逆に「困ってるならあげる」「好きだから使って」などのニュアンスで送金していた場合、贈与とされる可能性が高くなります。
口約束でも成立する「金銭消費貸借契約」
民法上、金銭の貸し借りは口約束だけでも成立します。たとえ借用書がなくても、返済を求めた証拠(メールや録音)や、相手が返済を了承した履歴があれば契約は成立したと認定される可能性があります。
特に「○月までに返す」「〇〇万円で合意する」といったやり取りがメールやチャットで残っていれば、それ自体が契約書に準ずる証拠と見なされることもあります。後から「やっぱり無理」と言われた場合でも、初期の了承履歴が鍵になります。
証拠が不十分な場合の対応策
問題は、領収書やレシートが手元にない、現金で渡したといったケース。こうした場合でも、以下のような補強証拠があれば主張が通る可能性があります。
- 返済に関する相手との会話の録音
- 支払いの目的が明示されたメールやLINE
- 診断書や暴力の証拠(損害賠償の根拠になる)
また、相手に弁済能力があり、合意した内容に矛盾がない場合は、少額訴訟などの簡易裁判で争うことも可能です。
刑事責任や損害賠償請求の可能性
交際中に受けた暴力(DV)については、診断書や写真があれば暴行罪や傷害罪として刑事告訴の対象になりえます。また、慰謝料請求の根拠にもなります。
例えば「病院の診断書」「殴られた時の写真」「暴力を受けたとわかるLINEやメッセージ」などがある場合、弁護士に依頼することで損害賠償請求を提起することができます。民事だけでなく刑事のアプローチを併用することも選択肢のひとつです。
示談交渉・少額訴訟・民事調停などの選択肢
300万円という額は地方裁判所での訴訟に該当しますが、内容によっては以下の手段が現実的です。
- 示談交渉:弁護士を通じて返済合意に基づく交渉
- 民事調停:裁判所の仲介による合意形成
- 少額訴訟:金額が60万円以内であれば迅速な手続きが可能
弁護士費用が心配な場合は、法テラスの無料相談や、自治体の法律相談会を活用するのも一つの手です。
まとめ:証拠と合意の履歴が鍵。早期に専門家に相談を
感情的に納得できない状況でも、法律的には「証拠」がすべてです。交際中に貸したお金であっても、返済の約束があり、それがメールやチャットに残っていれば請求権は成立します。
まずは、手元にある資料を整理し、内容を時系列でまとめた上で、法テラスや弁護士に早めに相談することをおすすめします。大切なのは「悔しさ」ではなく、「冷静な準備と行動」です。