高齢社会が進む中、親の将来に備える手段として注目されているのが「任意後見制度」です。中でも「任意後見契約に基づく申立て前の予約票」の取得について、「制度を最後まで利用すべきか」「申立てをせずに予約だけしておくのが得策か」悩む声が多く聞かれます。この記事ではその判断材料となるポイントを詳しくご紹介します。
任意後見制度とは?基本的な仕組みを理解する
任意後見制度は、本人が判断能力のあるうちに、将来の後見人をあらかじめ契約で決めておく制度です。判断能力が低下した時点で家庭裁判所の申立てにより、任意後見監督人が選任され、正式に制度が開始されます。
任意後見契約には公正証書による作成が必要で、司法書士や弁護士など専門家の支援を受けるケースが多く見られます。
「予約票」だけ取得するメリットと限界
申立てをせず、任意後見契約書を作成し、契約内容を法務局に登記しておけば「予約票(登記識別情報)」が発行されます。これにより、いざという時にすぐ後見人を立てられる準備が整っている状態になります。
しかし、この段階では後見制度はまだ発動していません。判断能力が低下しても家庭裁判所に申立てをしなければ、契約していた後見人も効力を持ちません。
監督人が選任されるとどうなる?費用と役割の現実
実際に任意後見をスタートするためには、家庭裁判所に申立てを行い、任意後見監督人が選ばれる必要があります。監督人は後見人の業務をチェックする第三者であり、通常は弁護士や司法書士が選任されます。
監督人には月額1〜3万円程度の報酬が発生し、この金額は本人の資力に応じて決定されます。つまり、後見制度を実際に利用すると定期的な費用が発生する点に注意が必要です。
どんな人に制度の活用が適しているか?
以下のようなケースでは任意後見制度の利用が特に効果的です。
- 独居で頼れる親族がいない
- 財産管理や契約行為に不安がある
- 高齢の親に持病があり、将来的な認知症リスクがある
反対に、家族や親族との関係が良好で、柔軟に支援体制を構築できる家庭では、予約票のみの取得でも当面は安心材料となる場合があります。
利用する・しないの判断基準
ポイントは「どこまで備えたいか」です。費用が発生しても将来のリスク管理を明確にしておきたい方は、申立てをして制度を発動させたほうが安心でしょう。
一方、今すぐ後見は不要だが、将来必要になった際に慌てたくない場合は、契約と予約票取得だけに留めておくのも現実的な選択肢です。
司法書士への依頼は必要か?
任意後見契約は専門性が高いため、司法書士や弁護士のサポートを受けるのが一般的です。契約書の作成、公正証書の手続き、法務局への登記まで任せることができるため、確実性と安心感が得られます。
ただし費用面は事務所によって異なるため、複数の専門家に相談・比較するのがよいでしょう。
まとめ:将来への安心をどう得るかがカギ
任意後見制度は、将来の安心を確保する有効な手段です。必ずしも申立てまで行う必要はなく、契約と予約票取得だけでも十分に価値があります。
制度を利用するか迷ったら、まずは無料相談が可能な司法書士や成年後見センターに相談してみましょう。早めの準備が、いざというときの「心の余裕」に繋がります。