築古住宅と土地の共有名義における相続と売却のポイント|トラブル回避のための法的知識

親と同居している実家の相続をめぐる問題は、家族間での感情的な対立を招きやすく、法的な知識が不可欠です。特に建物と土地の名義が異なる場合や、相続後に兄弟姉妹から売却を提案されるケースでは、冷静な対応が求められます。この記事では、築年数の古い家屋と土地の共有名義に関する実務的な対応を詳しく解説します。

相続財産の構造を理解する:建物と土地の名義が異なる場合

よくあるケースとして、建物が親名義、土地が子供や兄弟姉妹との共有名義になっている場合があります。このような場合、親が亡くなった時点で建物は法定相続人に相続され、土地は既に所有権が分かれているため、特定の法的整理が必要です。

たとえば、母が建物の単独名義人であり、土地は兄とあなたの2人の共有であるならば、母の死亡により建物の権利は兄弟間で分割協議されますが、土地の権利はすでに確定しているため、相続の対象外となります。

築古住宅の資産価値と売却の現実

築39年の建物は、一般的に資産価値がゼロに近いと評価されることが多く、固定資産税評価額でも低めに設定されている可能性があります。売却時には、むしろ「建物を解体して更地にしてから売る」ことを前提に価格交渉が行われるケースが多くあります。

このため、「兄から売却を持ちかけられた」としても、それに必ず従う必要はありません。ただし、土地が共有名義である以上、売却には共有者全員の合意が必要です。兄が勝手に売却を進めることはできません。

兄からの売却提案への対応方法

兄が「自分の持ち分だけを第三者に売却したい」と主張した場合、法的にはその持ち分の売却は可能です。しかし、実際に共有土地の持ち分だけを購入する第三者は少なく、売買は成立しにくいのが現状です。

一方で、兄が「持ち分をあなたに買い取ってほしい」と求めてきた場合、それを受け入れる義務はありません。価格や条件に納得がいかなければ断って問題ありません。ただし、今後のトラブルを防ぐためにも、専門家を交えて協議することが望ましいです。

共有状態を解消する方法とその選択肢

共有名義を解消するには、以下のような方法があります。

  • あなたが兄の持ち分を買い取る
  • 兄があなたの持ち分を買い取る
  • 双方で合意して第三者に売却する
  • 家庭裁判所に「共有物分割請求」を申し立てる

話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所での分割請求によって、強制的に解決を図ることも可能です。この場合、土地の競売となるリスクもありますが、公正な価格での解決を目指す手段の一つです。

実例:築40年の実家を巡る相続トラブル

ある兄弟が築40年の実家の相続後、兄が売却を主張、弟は住み続けたいというケースでは、最終的に弟が兄の持ち分を不動産鑑定士の評価額で買い取り、問題を解決しました。

このように、話し合いによって円満な解決が可能なケースも多く、感情的になる前に客観的な視点を持つことが重要です。

まとめ:相続と共有持分の理解がトラブルを防ぐ

築年数が古く資産価値が乏しい住宅でも、感情的な要素が絡むと家族間のトラブルに発展しがちです。建物と土地の名義、そして相続後の権利関係を正しく理解し、冷静に対応することが大切です。売却や買取の話が持ち上がった際は、まず専門家に相談し、法的な視点から最善の選択を検討しましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール