夫婦の離婚時には財産分与や親権の問題が中心となりますが、それに付随して「子供名義の通帳」に関するトラブルも増加しています。中には、配偶者に内緒で子供名義の通帳を作り、離婚後もそれを“隠し資産”として扱えるのではと考える方もいます。この記事では、そのようなケースが実際にどう扱われるのか、法的な観点から詳しく解説します。
子供名義の通帳とは:誰の財産かを理解する
まず大前提として、子供名義の通帳に入っているお金の「所有者」は原則として子供です。ただし、誰が入金し、どのような目的で作成された通帳かによって、実質的な所有者とみなされる人物が変わってきます。
たとえば、親が自分の収入を子供名義の通帳に入れていた場合でも、管理実態や使途によっては、その口座は“親の財産”と見なされることがあります。つまり「名義だけ子供」というケースも少なくないのです。
離婚時の財産分与と隠し口座の問題
離婚時の財産分与では、夫婦共有の財産は公平に分け合うことが原則です。もし、どちらかが意図的に財産を隠していた場合、それが発覚すれば不利な条件での離婚調停や訴訟となる可能性もあります。
子供名義の通帳を隠し口座として利用することは、後に発覚した際に「財産隠し」として扱われる恐れがあります。家庭裁判所は、口座の名義ではなく、実質的な管理や入金状況を重視するため、通帳を誰が管理し、どのように使っていたかが重要です。
親権の有無と通帳の管理権限
離婚後、親権者が母親になった場合、原則として子供の財産に関する管理権も母親に移ります。このため、父親が勝手に子供名義の通帳を保持し続けたり、引き出したりすることは「親権者による管理を妨害する行為」とみなされかねません。
このような行為は民法上の親権侵害に該当し、最悪の場合、損害賠償や刑事告発に発展するリスクもあります。親の立場でも、子供名義の通帳を私的に使用することには注意が必要です。
実例:通帳をめぐるトラブルと裁判例
実際にあった事例として、父親が離婚前に子供名義で貯金していた通帳を、離婚後も自分で管理し続けていたケースがあります。母親がこれを発見し、家庭裁判所に申し立てた結果、裁判所は「通帳は子供の財産であり、管理権は親権者にある」と判断。父親に返還を命じました。
このように、子供名義の通帳であっても、実態に応じた判断がなされるため、事前に弁護士など専門家へ相談するのが賢明です。
通帳をトラブルにしないためにできること
子供名義の通帳は、教育費や将来の進学資金として真っ当な目的で使うことが理想です。以下のような管理が推奨されます。
- 入金や出金履歴を明確に記録する
- 使途を明確にして、親の私的流用は避ける
- 通帳は親権者が管理する
- 離婚時には通帳の存在をオープンにし、協議の場で取り扱いを決める
これらを実践することで、離婚後も円滑な関係を維持し、子供の将来にトラブルを残さない対応が可能になります。
まとめ:通帳の名義ではなく「実態」が問われる
離婚後に子供名義の通帳を“隠し口座”として使おうとするのは、法的にも倫理的にもリスクが大きい行為です。名義よりも実態が重視され、親権者以外が通帳を勝手に使えば問題視される可能性があります。
将来のトラブルを回避するためにも、専門家に相談し、法的に正しい形で財産管理を行うことが何より大切です。子供のための通帳が、争いの種にならないよう十分に注意しましょう。