高齢者の年金が、親の生活費ではなく子どもの援助に使われるケースが少なくありません。親自身が生活に困っていても、子どもを思う気持ちから援助を断ち切れない…。このような状況は「経済的虐待」として扱われる可能性があります。本記事では、その定義や事例、対応策をわかりやすく解説します。
経済的虐待とは？厚生労働省の定義から考える
厚生労働省は、高齢者虐待防止法において経済的虐待を「本人の同意なしに財産を使う、または不当に制限すること」と定義しています。
典型的な例には以下のようなものがあります。
- 年金や貯金を勝手に引き出して使用
- 生活費の提供を強制
- 本人の意思に反して金銭を譲渡させる
一見、親が自発的に渡しているように見えても、その背景に心理的圧力や支配的関係がある場合は、経済的虐待に該当することがあります。
親心による援助が「虐待」になるケースとは
たとえば、息子が失業中で「借金をするくらいなら親から」と頼み込むような状況で、母親が年金を繰り返し渡している場合。その行為が親自身の生活を脅かしているなら、すでに虐待的な関係にあると判断される可能性があります。
実際の相談事例でも、「断ると怒鳴られる」「生活費が足りず医療も受けられない」といった状況は、明らかな虐待として行政が介入したケースがあります。
経済的虐待のサインとチェックリスト
- 年金や収入がほとんど残らない
- 通帳や印鑑を子どもが管理している
- 金銭支出に不安を感じているのに止められない
- 「親なんだから出して当然」と言われる
これらの項目に複数当てはまる場合、支援機関や自治体に相談すべき段階かもしれません。
相談先と支援制度の活用法
もし経済的虐待が疑われる場合、以下のような機関へ相談することができます。
- 地域包括支援センター
- 市区町村の高齢者福祉課
- 家庭裁判所による成年後見制度
- 消費生活センターや弁護士相談
特に成年後見制度は、金銭管理を第三者に委ねることで搾取から守ることが可能です。
親子関係を壊さずに援助を止めるには
経済的虐待を指摘すると、親子の信頼関係が揺らぐこともあります。そのため、支援者を通じた「第三者の立場」からのアプローチが効果的です。
たとえば「今後の生活設計のために、収支の見直しをしたい」といった形で、親の側から距離を取る提案を行うのも一つの方法です。
まとめ：年金搾取は虐待の一種。誰でも相談してよい
✅ 親の意思に反して年金を渡し続けるのは「経済的虐待」に該当する可能性があります。
✅ 明確な「暴力」ではなくても、心理的圧力や依存関係が背景にある場合は注意が必要です。
✅ 迷ったら一人で抱えず、地域包括支援センターや行政窓口に相談してみましょう。
親も子も安心して暮らせる環境を整えるために、早めの気づきと行動が大切です。