車両が自転車に対して威圧的に接近・進行し、それに驚いた自転車が事故を起こした場合、いわゆる“誘発事故”が成立する可能性があります。本記事では、自転車が歩道に逃げて歩行者と接触した場合における過失割合や法的責任の考え方を、実例を交えながら解説します。
事案の構造と登場人物
本件では、以下の構成となります。
- ① タクシー:後方から接近し、クラクションで自転車を威嚇
- ② 自転車:驚いて歩道に逸脱
- ③ 歩行者:巻き込まれる形で接触
このようなケースでは「直接接触していなくても、行為が事故を誘発した場合」に責任が問われる可能性があります。
歩行者の過失割合は基本的にゼロ
歩道上で通常の通行をしていた歩行者が、自転車に衝突された場合、原則として過失割合は0%と考えられます。
判例上も「予見できない自転車の飛び込み」による接触であれば、歩行者に過失はないとする傾向が強く、責任は加害側に集中します。
自転車側の過失|歩道への乗り上げが争点に
自転車が「歩道に乗り上げて事故を起こした」場合、自転車にも一定の注意義務違反が認定される可能性があります。
ただし、タクシーの煽りや威圧行為がきっかけであったとすれば、通常の過失割合(例:自転車100%)が修正される可能性が高いです。
例として、自転車と歩行者の事故で本来80:20のところ、煽った車両の関与が認定されれば、自転車の過失は減少する可能性があります。
タクシーに「誘発責任」が問われる根拠
道路交通法第54条では、「警音器は必要時以外使用禁止」と定められています。進路を譲らせるためにクラクションを鳴らす行為自体が違法となる場合もあります。
また、民事上は「事故を招いた間接的加害者」として損害賠償責任が発生することもあります(例:東京地裁平成27年判決など)。
過失割合の想定パターン(仮定)
関係者 | 通常想定 | タクシーの誘発行為が認定された場合 |
---|---|---|
歩行者 | 0% | 0% |
自転車 | 100% | 30~50% |
タクシー | 0% | 50~70% |
※実際の割合は事故態様や証拠、裁判官の判断により異なります。
証拠の重要性と今後の備え
このような複雑な事故では、防犯カメラ・ドライブレコーダー映像が非常に重要です。
証拠があれば、誘発行為が立証され、自転車側や歩行者が一方的に責任を負わされるリスクを減らすことができます。
まとめ
✔ 歩行者は原則無過失(0%)
✔ タクシーがクラクションで自転車の動線を乱したなら、誘発行為として高い過失が認定されうる
✔ 自転車の過失もゼロではないが、状況次第で軽減される可能性あり
✔ 証拠(映像・証言)を残すことが、正当な責任分担を導く鍵になります