刑事事件における私選弁護人の収益構造と示談・裁判の関係とは?

刑事事件で弁護士を依頼する際、「私選弁護人」が関わる場面があります。特に被疑者やその家族にとって、事件が裁判に進むか、示談によって不起訴になるかは非常に重要な関心事です。しかし、それを担当する弁護士側にとっては、どちらが収益的にメリットがあるのでしょうか。本記事では、私選弁護人の報酬体系や実務上の傾向を踏まえ、収益と事件処理の関係について解説します。

私選弁護人の報酬体系とは

私選弁護人とは、被疑者やその家族が費用を支払って依頼する弁護士のことです。報酬体系は自由契約であるため、着手金・成功報酬・日当などの形で依頼者と合意された内容に基づいて報酬が支払われます。

たとえば、ある弁護士事務所では「着手金30万円+示談成功で追加10万円」「公判対応が必要な場合は1期日ごとに5万円追加」といった料金設定がされていることもあります。このように、裁判が長期化すればするほど弁護士報酬が増える構造は確かに存在します。

示談で解決するメリットと限界

示談によって不起訴となれば、被疑者にとっては前科がつかず社会復帰しやすくなります。私選弁護人にとっても、早期解決となることで別の案件を受任しやすくなるというメリットがあります。

実際、刑事事件専門の弁護士の多くは「早期解決こそ依頼者の利益」と捉えており、示談交渉に注力するケースも多いです。そのため、単に報酬額の多寡よりも、依頼者の利益を優先する弁護士も多数います。

公判対応による収益と負担

刑事裁判になると、証拠調べ・期日対応・書面作成など、弁護士の業務量が一気に増加します。報酬面ではプラスになるかもしれませんが、準備にかかる時間や精神的負担も無視できません。

また、公判対応の報酬は依頼者の経済状況によって支払えないケースもあり、すべてが「儲かる」とは限りません。特に被疑者が長期勾留されている場合は、弁護士が報酬を回収しにくくなるリスクもあるため、慎重に判断する必要があります。

倫理的観点と弁護士の使命

弁護士は利益だけで動いているわけではありません。弁護士法や日本弁護士連合会の倫理規定では、依頼者の利益を最優先に行動する義務が課されています。そのため、「裁判に進んだ方が報酬が高いから」といった理由で、示談による解決を避けることは倫理上も問題となります。

多くの弁護士は「社会正義の実現」「依頼者の権利保護」という使命を持ち、収益性だけで方針を決定することはありません。

実例:示談成立による不起訴と報酬の例

たとえば暴行事件で逮捕されたAさんのケースでは、弁護士が就任してすぐに被害者と連絡を取り示談交渉を開始。3日後に示談が成立し、不起訴処分が決定。弁護士報酬は「着手金30万円+成功報酬10万円」のみで済みました。

一方で、同様の事件で示談が不成立だったBさんのケースでは、5回の公判が開かれ、報酬総額は70万円以上に上りましたが、本人は保釈されず勾留が続いたため、支払いに支障が出る結果となりました。

まとめ:収益よりも依頼者の利益が最優先

私選弁護人にとって、確かに刑事裁判に進むと収益が増える可能性はありますが、それ以上に「依頼者の利益」や「迅速な解決」が重視されています。示談での解決は時間的・精神的・経済的コストが低く、双方にとって最良のケースが多いため、ほとんどの弁護士は収益よりも適切な解決を優先して動いています。

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