カップルで共有していたゲームアカウントを、別れた後に一方が勝手に使用して課金を行った場合、果たしてそれは法的にどのような問題をはらむのでしょうか。恋愛関係の延長として軽く考えてしまいがちなこのケースですが、実際には刑事事件につながる可能性もあります。本記事では、アカウント共有と無断課金をめぐる法的リスクや対応策について、具体例を交えて解説します。
アカウントの「共有」と所有権のあいまいさ
スマホゲームのアカウントを共有していた場合、実際にはどちらが所有者なのかが不明確なことが多くあります。しかし、課金が特定の人物のクレジットカードや口座からなされていた場合、その金銭の出どころが「使用者の合意に基づかない」ものであれば、法的には大きな問題となります。
このような関係性のなかで起きる課金行為は、もともと双方の合意があってこその共有であり、破局後の使用は「無権限の使用」に該当する可能性があります。
無断での課金は「不正利用」や「詐欺罪」にあたるか?
別れた後にアカウントへ無断ログインし、金銭を発生させた場合、以下のような罪に問われる可能性があります。
- 詐欺罪(刑法第246条):他人を欺いて財物を取得する行為。課金行為が「欺罔行為」と見なされれば該当します。
- 電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2):コンピューターシステムを不正に操作して利益を得る行為。
- 窃盗罪または不正アクセス禁止法違反:アカウントやパスワードの使用に対して同意が得られていない場合。
これらの罪に該当するかどうかは、実際には課金額や双方の関係性、ログイン時の同意の有無、支払い手段などを総合的に判断されます。
返金意思なし=民事でも損害賠償請求の対象
Bくんが明確に返金の意思を示していない場合、Aさんは民事的にも損害賠償請求が可能です。課金額が少額であっても、証拠として支払い明細、アカウント履歴、LINEなどのやり取りが揃っていれば、少額訴訟制度を使って請求することも可能です。
また、示談に応じない場合や連絡が取れない場合には、警察への被害届提出や法的手続きの検討も視野に入れましょう。
実際の相談例と対応のヒント
実際に類似の相談が多く寄せられており、「別れた元恋人がアカウントを使って課金を続けていた」「支払いが数万円に達していた」という事例もあります。その場合、まずやるべきことは次の3つです。
- 支払い履歴やアカウントの使用ログを保存
- 相手に事実を伝え、返金交渉を試みる
- 応じない場合は消費生活センターや弁護士に相談
なお、SNSなどで感情的に非難することは名誉毀損に該当する可能性があるため避けましょう。
まとめ:恋愛関係でも金銭は「契約」や「合意」が前提
恋人関係であっても、金銭の支出やサービス利用には法的な合意が必要です。破局後の無断利用は、犯罪として処罰対象になり得ることを忘れてはなりません。
不正利用が疑われる場合は、証拠を確保したうえで、警察や弁護士への相談を検討し、冷静かつ適切に対応することが重要です。