社員の顔写真を企業ホームページに掲載する際に必要な同意と法的リスク

企業の広報活動や信頼性の向上を目的に、社員の顔写真をホームページに掲載するケースが増えています。しかし、社員の同意を得ずに無断で掲載してしまうと、プライバシー侵害や肖像権侵害といった法的問題が生じる可能性があります。本記事では、社員の写真掲載にまつわる法的な観点と、トラブルを防ぐためのポイントを詳しく解説します。

顔写真は「個人情報」かつ「肖像権」の対象

社員の顔写真は、個人を特定できる情報であるため「個人情報保護法」の対象となります。また、顔が写った画像には肖像権が認められ、本人の許可なく公開することは原則としてできません。これはプライバシーの侵害にもつながるため、慎重な取り扱いが求められます。

特にウェブサイトへの掲載は不特定多数の目に触れる公開行為にあたるため、必ず本人の事前同意を得ることが必須です。単なる社内通達や、口頭での曖昧な了承ではなく、書面や明確な意志確認が理想的です。

社員の同意なしに掲載した場合のリスク

本人の同意なく写真を掲載した場合、社員から肖像権侵害による損害賠償請求を受ける可能性があります。掲載の目的が業務に関連していたとしても、裁判で違法と判断される事例も存在します。

たとえば過去の裁判例では、従業員の写真を無断でパンフレットに使用したことで慰謝料の支払いが命じられたケースがあります。明確に「写したくない」と意思表示したにも関わらず撮影・掲載された場合、悪質性が高いと判断されやすくなります。

「笑顔で撮影してほしい」は強制できるのか?

写真撮影の際に「笑顔で」などの希望があったとしても、それが強制であるとパワハラの一環として認定される可能性も否定できません。撮影姿勢についても本人の自由意思を尊重することが重要です。

特に「笑顔でなければ撮り直す」「写りたくないという意思を無視する」といった対応は、精神的な苦痛を与える行為とみなされかねません。職場での人権意識の観点からも、表情の強要は避けるべきです。

掲載にあたって企業側が取るべき対応

  • 事前に同意書を取り交わす:撮影・掲載の目的、範囲、期間などを明記する。
  • 表情や姿勢に関する強要を避ける:自然な姿勢での撮影を許可し、希望に沿わない場合は代替案を検討。
  • 掲載後も取り下げに応じる姿勢を持つ:社員からの申し出があれば速やかに対応する。

これらの措置を講じることで、社員との信頼関係を損なうことなく適切な広報活動が可能になります。

訴えたら勝てるのか?法的判断のポイント

訴訟となった場合、裁判所は次の観点から違法性を判断します。

  • 本人の同意が明確にあったか
  • 掲載された写真の内容や文脈
  • 掲載がプライバシーや人格権に及ぼす影響
  • 企業側の対応の適切性(削除対応、説明責任など)

本人が掲載を望まず、それを明示的に伝えていたにもかかわらず掲載された場合には、違法とされる可能性が高いです。ただし、企業が適切なプロセスを踏んでいたかどうかが重要な判断基準となります。

まとめ:社員写真の取り扱いは慎重に

社員の顔写真をホームページに掲載するには、事前の同意と丁寧な説明が不可欠です。違法リスクを避けるためにも、以下のポイントを押さえて対応しましょう。

  • 撮影・掲載には本人の明確な同意が必要
  • 笑顔などの表情指示は強制できない
  • 異議がある場合は掲載を見送るか、対応を柔軟に
  • プライバシー侵害や肖像権侵害に注意

企業と社員双方が安心できる職場環境をつくるためにも、写真の取り扱いについて十分な配慮を心がけましょう。

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