隣家の外壁が境界線に接近している場合の法的対応と損害責任の考え方

近隣住宅との境界問題は、建築基準法や民法の規定に加え、後のリフォームや解体工事にも影響を及ぼす重要なテーマです。とくに外壁の設置位置が問題となるケースでは、損害の発生や法的請求の可否について正確な理解が必要です。

外壁が境界線から50cm未満に建っている場合の法的評価

民法第234条により、建物の外壁は原則として境界線から50cm以上離す必要があります。ただし「隣地所有者の承諾」や「地域の慣習」があれば例外となります。これに違反して建築された場合、建物自体の移設請求は原則不可とされることが多いですが、状況により損害賠償請求の可能性はあります。

なお、建築当時にこの規定が守られていなかったとしても、すぐに違法建築として解体を求めることはできません。しかしその建築行為によって損害が発生している、または今後発生する可能性が高い場合、一定の民事責任が問われるケースもあります。

損害賠償請求と時効の問題

民法上の不法行為による損害賠償請求権には、損害および加害者を知った時から3年、または行為時から20年という消滅時効があります(民法724条)。外壁の違法設置による損害が明確に認識された時点から3年以内であれば、請求の余地があります。

しかし、購入時点で既に隣家の状態を把握していた場合や、10年が経過しているような状況では、実際に時効によって請求権が消滅している可能性が高いため、専門家との相談が必須です。

解体工事時に足場が組めないことへの対応

自宅の解体工事に際して足場を組むために隣地を使用する場合、隣家の同意が必要ですが、同意が得られない場合でも一定条件下では「民法209条(隣地使用権)」により一時的な使用が認められることがあります。

ただし、足場が完全に設置できない場合に隣家へ損害が生じたとしても、それが不可避的かつ相当な注意を払っていたことが証明されれば、損害賠償の免責が認められる可能性もあります。特に隣家の建築自体が法令に違反していると判断されれば、過失割合に大きな影響を与えます。

隣地建物が現行法違反の場合の法的立場

現行の建築基準法や民法に違反している建物であっても、築年数が古く、確認申請時点で法的に許容されていた可能性もあるため、単に50cm未満という事実だけで違法と断定することは困難です。

ただし、現在進行形で実害(通風や採光の阻害、修繕困難)があるときは、差止請求や損害賠償請求の余地も検討できます。過去の判例においても、建築が原因で他者の財産に重大な不利益があると認められれば、相応の救済が認められた例があります。

まとめ:法的対応と現実的な解決策

隣家の外壁が境界線から50cm未満の位置にある場合、すぐに是正を求めることは難しいものの、損害の程度や発生時期によっては損害賠償の可能性が残されています。解体時の足場問題についても、事前の法的対応と隣家との調整が重要です。

現状においては、建築士・弁護士・土地家屋調査士などの専門家による個別相談を通じて、リスクの最小化と権利の保全を図ることが望ましいでしょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール