養育費は子どもの生活を支える重要な資金であり、支払い義務者と受け取り側双方にとって大きな意味を持ちます。近年では養育費の未払い対策として強制執行の制度も活用されていますが、一方で支払義務者からの減額調停の申し立ても増えています。では、減額調停が申し立てられた場合、養育費の支払いはどうなるのでしょうか?本記事では、その影響や流れ、注意点について詳しく解説します。
養育費の減額調停とは?
養育費の減額調停とは、支払義務者が経済状況の悪化や再婚などの事情変更を理由に、家庭裁判所に「養育費を見直したい」と申し立てる手続きです。
この調停では、過去に取り決めた金額が「現在の状況に合っているか」を再検討し、双方の意見を調整した上で、必要に応じて金額変更を行います。
申し立てた時点で支払いは一時的に止まるのか?
調停を申し立てたからといって自動的に支払いが止まることはありません。つまり、調停中であっても、当初の取り決めに基づく支払い義務は継続します。減額が正式に決まるまでは、強制執行も引き続き有効です。
支払いを勝手に停止した場合、「履行遅滞」と見なされ、遅延損害金が発生したり、信用を損なったりする可能性がありますので、非常に注意が必要です。
調停成立後の効力と適用時期
仮に減額が調停で合意された場合、その効力は基本的には申し立てた日以降に遡って適用されることが一般的です。ただし、家庭裁判所が状況を考慮し、合意日から適用すると判断するケースもあります。
一方で、合意に至らなかった場合は審判や訴訟に移行し、さらに時間がかかることがあります。この間も旧来の支払額が原則有効です。
強制執行中の場合の影響は?
養育費の強制執行(差押え)中であっても、調停の申し立ては可能ですが、執行を停止させるには「執行停止の申し立て」など別途の手続きが必要です。調停の申し立てだけでは、強制執行そのものを止める効力は持ちません。
差し押さえられている側が調停成立後に減額された場合、過払い分の返還を求めることは可能ですが、裁判所の判断や合意内容により左右されます。
実際の調停事例とアドバイス
例:失業による減額希望
40代男性が失業を理由に月5万円から月2万円への減額を求めて調停を申し立てました。最終的に、当初の支払い義務は維持されたものの、支払い開始時期が失業翌月に変更されました。このように、個別事情が考慮されるため、しっかりと証拠や資料を用意することが重要です。
支払義務者としては、収入減少を証明できる書類(源泉徴収票、離職票など)を準備し、誠実に調停に臨むことが信頼を得る鍵です。
まとめ:減額調停中も原則支払い義務は継続
養育費の減額調停は、支払義務者にとって重要な制度ですが、調停の申し立てだけで支払い義務が停止するわけではありません。正式に合意・裁判所の判断が出るまでは、従来通りの支払いを続けることが原則です。
法的手続きが絡むため、不安な方は専門の弁護士や家庭裁判所相談員に相談することをおすすめします。正確な知識と対応で、トラブルのない解決を目指しましょう。