示談が成立した後も、関係者には「守秘義務」が課されることがあります。特に弁護士を通じて示談した場合、秘密保持に関する条項が含まれていることが多く、その範囲や制限が曖昧に感じる方も多いのではないでしょうか。本記事では、元の弁護士に伝えた内容を新しい弁護士に共有することが守秘義務違反になるのか、また、どこまでが許容されるのかを分かりやすく解説します。
示談における守秘義務とは?
示談における守秘義務とは、当事者同士が合意した「示談内容」や「事案の詳細」について、第三者に漏らさないことを約束するものです。この守秘義務は契約上の取り決めであり、法的拘束力があります。
たとえば、「本件に関する事実関係および示談の内容を第三者に開示しない」と記載されていれば、それを破る行為は守秘義務違反となり、違約金の対象や損害賠償請求を受ける可能性もあります。
弁護士との情報共有は守秘義務違反になるか
では、示談に関する情報を新たに委任した弁護士に伝えることは守秘義務違反になるのでしょうか?基本的には「守秘義務の対象=第三者」であり、新たな弁護士が正規に委任された場合は「第三者」に該当しないというのが一般的な解釈です。
実際、示談を巡る法的リスクや後続対応のために、別の弁護士に過去の示談内容を相談・報告するのはよくあるケースです。ただし、示談書に「再委任者への開示禁止」など特別な制限が明記されていないかは確認が必要です。
実務上の取り扱いと留意点
新しい弁護士に伝える際には、以下の点に注意すると安心です。
- 口頭ではなく、示談書の写しや事実関係の整理文書を基に伝える。
- 前の弁護士名や解決内容は、必要最低限にとどめる。
- 「守秘義務に抵触しない範囲で相談したい」と明言する。
また、新しい弁護士が過去の事案をどのように受け取るかもポイントです。特にメディア対応や公的発言が関わる場合は、事前に法的リスクを洗い出しておくとよいでしょう。
実例:複数弁護士による対応と守秘義務
ある性被害事案では、第一弁護士が被害者の代理人として示談に臨み、解決後に別の弁護士が社会的発信を担当しました。このとき、示談の存在自体は公表せず、「示談の事実があること」や「被害内容の一部」のみを新弁護士に共有し、守秘義務違反にならずに対応がなされました。
このように、弁護士間での引継ぎや相談は業務上必要な行為であり、適切な手順を踏めば問題にならないケースが多いです。
守秘義務違反が問題となる場面
一方で、SNSでの暴露や、メディア取材への個別回答などは守秘義務違反のリスクが極めて高い行為です。たとえ新しい弁護士が情報を知っていたとしても、その内容を広く発信することには慎重さが求められます。
示談の性質上、当事者間の信頼関係を前提に成り立っているため、一方の勝手な開示が破綻を招くこともありえます。
まとめ:新しい弁護士への共有は原則可能だが慎重に
示談の守秘義務は、原則として第三者への開示を禁じるものですが、正規に委任された新しい弁護士への情報提供は必要かつ合理的な行為とみなされます。ただし、契約書の記載内容や共有方法によっては例外があるため、事前に確認し、慎重に対応することが大切です。
万が一のトラブルを避けるためにも、次の弁護士にも守秘義務があることを確認し、示談書の範囲内で情報共有するよう心掛けましょう。