刑事事件の判決が確定した後、日常生活に必要なスマホや私物が警察に押収されたまま返却されない――。このような事態に直面したとき、どう対処すればよいのでしょうか。この記事では、判決確定後にも関わらず返還が遅れている証拠品への対応方法を、法律的な観点から解説します。
証拠品返却の原則:判決確定後の返還義務とは
刑事裁判で押収された物は、判決が確定すれば、必要がない限り原則返還されるべきものです。ただし、押収品が事件に関わる物(例:凶器、違法薬物)や、刑の執行に利用されるもの(例:罰金の代物弁済)であれば、返還されないこともあります。
スマートフォンや衣類、現金などの一般的な私物であれば、判決確定後に返還請求が可能です。
返還が遅れる主な理由とは?
実際に返還が遅れる原因にはいくつかあります。
- 担当警察署の手続き遅延:人員不足や書類処理の都合。
- 証拠品の所有権確認:複数人の関与が疑われる場合。
- 上訴の確認:控訴期限(通常は14日)後でないと確定とみなされない。
このような事情で、「判決確定後すぐに返ってくる」とは限らないのが実情です。
返還請求の具体的な手順
証拠品の返還を求めるには、まずは警察署に対して文書または口頭で申し出ることが第一歩です。明文化された請求がないと、対応が後回しにされることもあります。
また、刑事訴訟法第123条に基づき、「押収物の還付請求書」を提出することで、法的に正式な返還手続きを踏むことが可能です。これには所有者本人または代理人(弁護士など)が提出できます。
弁護士の役割と依頼すべきケース
警察が返還に応じない、または対応が不誠実な場合は、弁護士に返還交渉や還付請求の代理を依頼することが有効です。
特に以下のような状況では、弁護士を通じて対応したほうがスムーズです。
- 証拠品に高額な財産が含まれる
- 返還拒否の理由が明示されない
- 公判中に返還を争点としたい場合
もし対応されない場合は?苦情・監査ルート
返還請求に対して警察が明確な回答をせず、長期にわたって返還されない場合は、都道府県警察の監察官室への苦情申し立てが可能です。
また、国家公安委員会や、場合によっては裁判所に対して「還付命令申立」を行うこともできます。
実例:スマホを押収されたケースの返還まで
ある被疑者が窃盗容疑で逮捕され、証拠保全のためにスマートフォンが押収された例では、判決確定から約3週間後に返還されました。その間、所有者は2度目の申請と、弁護士による問い合わせを行ったことが奏功しました。
このように、早めの申し出と粘り強い手続きが返還の鍵になります。
まとめ:粘り強く、手続きは「正式に」
押収品の返還は「ただ待つ」だけでは進まないことがあります。返還の意思を明確に示すこと、法的手段を検討すること、そして必要に応じて専門家(弁護士)に相談することが重要です。
スマホなど日常に必要な物であればあるほど、迅速な返還が求められます。正しい知識と手続きで、しっかり取り戻しましょう。