交通事故の示談交渉では、保険会社が被害者に慰謝料の金額を提示するのが一般的です。しかし「これが当社の限界です」という言葉に疑問を感じたことはありませんか?特にその金額が裁判などで認められる「弁護士基準」より低い場合、その差額はどうなるのか気になる方も多いでしょう。本記事では、保険会社の対応の背景と、差額を巡る実態についてわかりやすく解説します。
保険会社の慰謝料提示は「任意保険基準」がベース
交通事故の示談で保険会社が提示する慰謝料は、いわゆる「任意保険基準」によって計算されます。これは各社の内部基準であり、一般的に裁判所が用いる「弁護士基準(裁判基準)」よりも低めに設定されています。
たとえば、むち打ちによる通院3か月のケースでは、任意保険基準で30万円前後、弁護士基準では50万円以上となることもあります。この差は少なくありません。
「当社としては精一杯の額です」という表現の意図
保険会社が「これが弊社の限界です」と述べるのは、あくまで契約上支払える範囲を示すものです。つまりそれ以上の金額については、加害者本人に直接請求してほしいというメッセージを含んでいる場合もあります。
この言い回しは法的な責任回避の意図もあり、被害者に弁護士への相談を促すために用いられることがあります。特に損保会社の支払い上限に達した場合、それ以上の交渉は本人または代理人(弁護士)を通じて行うことが推奨されます。
弁護士基準との差額は加害者に請求できるのか?
結論から言えば、加害者に対して直接請求することは可能です。ただし、現実的には加害者に資力がない、あるいは連絡が取れないなどの理由から、回収が困難なことも少なくありません。
また、加害者が「すべて保険でカバーされるもの」と誤解している場合も多く、トラブルに発展することもあります。このため、弁護士を通して交渉することで、保険会社から上乗せした金額を引き出す交渉も可能です。
弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すると、「弁護士基準」に基づいた適正な慰謝料請求が可能になります。実際、多くのケースで保険会社の提示額よりも高額な慰謝料が認められています。
たとえば、ある被害者は保険会社から30万円の提示を受けましたが、弁護士を通じて交渉した結果、最終的には65万円に増額された例もあります。弁護士費用特約がある場合、本人の負担なく依頼できるのも大きな利点です。
注意点:示談書に署名する前に確認を
一度示談が成立すると、あとから追加請求することは極めて難しくなります。そのため、示談書への署名は慎重に行いましょう。内容に疑問がある場合は、弁護士や専門家に相談することを強くおすすめします。
また、加害者や保険会社とのやり取りの中で、感情的な言動や無理な要求を避け、記録を残しておくことも後の交渉に役立ちます。
まとめ:納得できる慰謝料を受け取るために
保険会社の提示額が「精一杯」と言われても、それが妥当かどうかを判断する材料は被害者自身が持っているとは限りません。弁護士基準との差額を知り、納得いく形で示談を成立させるには、専門的な知識やサポートが不可欠です。
交通事故の示談に納得できない場合は、弁護士への相談を検討しましょう。その一歩が、適正な賠償を受けるための重要な鍵になります。