自閉症スペクトラム障害(ASD)のある方が自動車を運転することは、状況によって十分に可能であり、実際に免許を取得し仕事や生活の中で運転をされている方も多くいます。しかし、万が一の事故が起こった場合には、通常と異なる点や特有の対応が求められることがあります。この記事では、ASDを抱える方が運転中に人身事故や物損事故を起こした場合にどのような対応が取られるのか、そして安心して運転するために必要な備えについて具体的に解説します。
自閉症の方が運転免許を取得する条件と現実
運転免許は、医師の診断や公安委員会の審査を経て適性があると判断された場合に交付されます。これはASDの方でも、運転能力に支障がないと判断されれば、法的に正当に取得できることを意味します。
実際、精神障害者保健福祉手帳を持っていても、運転に関しては個々の判断力や注意力の状態を元に審査が行われています。
事故を起こした場合の法的な取り扱い
ASDを有していても、事故が発生した際の法的責任の原則は他のドライバーと同じです。すなわち、過失があれば過失運転致死傷罪などが適用されることがあります。
ただし、刑事責任については、運転時の精神状態や故意・重過失の有無などが考慮される場合もあります。また、責任能力に疑義がある場合は、専門家による精神鑑定が行われることもあります。
自動車保険と賠償責任の実務
事故によって人や物に損害を与えた場合、民事上の損害賠償義務が生じます。これは任意保険や自賠責保険を通じて対応されますが、加入内容によって補償範囲が異なります。
ASDの診断がある場合でも、保険の加入に制限は基本的にありません。ただし、既往歴や事故歴の申告義務があるため、正確に伝えることが重要です。
運転時のリスク軽減に向けた具体策
- 運転支援機能付き車両の活用(自動ブレーキ、車線逸脱警告など)
- 渋滞時や夜間など負荷の高い時間帯の運転を避ける
- 定期的な運転スキルの見直しや講習への参加
- メンタルや体調が不安定な日は無理をしない
たとえば、あるASDの方はJAFの運転評価プログラムを受講し、苦手な場面の傾向を把握して自分に合った運転環境を整えています。
事故後に相談すべき窓口や支援機関
万が一事故を起こしてしまった際には、以下のような支援機関に相談することで精神的・実務的なサポートを受けることができます。
- 法テラス(法的支援や無料法律相談)
- 地域の精神保健福祉センター
- 医療機関の主治医・カウンセラー
- ASD当事者の自助グループやNPO
事故後の手続きや警察対応に不安がある場合は、弁護士や支援者を通じて進めることも選択肢の一つです。
まとめ:安心して運転を続けるために
ASDがあるからといって運転を制限されることはありません。しかし、運転中の不安を感じることがあるならば、それを正直に認めて自分に合った運転スタイルを模索することが、安全で継続的な運転のカギになります。
また、事故の際も通常の法律や保険制度に則って対応されます。「ASDだから処罰が重くなる」や「何も配慮されない」といった誤解は不要です。正確な情報と備えをもって、安心して生活や仕事を支える運転を行っていきましょう。