カルテ改ざんが疑われるときの訴状記載と法的アプローチの実務ガイド

医療機関とのトラブルの中でも深刻なのが「カルテ改ざん」です。患者側としては不信感を抱く大きな要因であり、訴訟に発展することもあります。しかし、「カルテの改ざん」を訴状にどう記載すべきか、どんな証拠や論理構成が必要なのか、具体的な記述方法を知っておくことは重要です。

カルテ改ざんとは何か?その定義と問題点

カルテ改ざんとは、医師または医療関係者が診療内容や診断、治療記録を故意に書き換えたり、後から不正に追加・削除する行為です。これは医師法・医療法・刑法(文書偽造罪)などに抵触する可能性があり、訴訟となれば損害賠償請求や刑事責任が問われることもあります。

具体例として、事故当時の記録がない、記録のタイムスタンプが不自然に新しい、以前と異なる記録が開示されたなどのケースが報告されています。

訴状に記載する際の基本的構成

訴状には事実関係を時系列で明確に記述することが求められます。「カルテ改ざん」を含めたい場合は、次のような構成が基本となります。

  • 1. 事実の概要:診療の経緯、日時、当時の対応内容
  • 2. 改ざんの疑いの根拠:記録の不一致、証拠開示されたカルテの変化、医師の証言との食い違いなど
  • 3. 被害内容と損害額:精神的苦痛、治療の遅れ、誤診による影響など
  • 4. 請求内容:損害賠償請求額、謝罪要求など

例文:『被告は原告の診療記録であるカルテの一部を、原告からの開示請求後に不自然な形で書き換えた形跡がある。特に2023年○月○日付の記録には、タイムスタンプ上、診療後1週間以上を経て記録されたデータが追加されており、当時の診断内容と異なる点が多く見受けられる。これにより原告は重大な不利益を被った。』

証拠として有効なものとは?

訴訟を有利に進めるには、カルテのコピーや開示請求で得たデータ、録音記録、医師との面談記録などの客観的資料が極めて重要です。特に、カルテの開示履歴やタイムスタンプが含まれる電子カルテのログは改ざんの痕跡を示す直接的証拠になり得ます。

可能であれば、医療事故調査・ADR(裁判外紛争解決手続き)を活用して証拠を保全したうえで、訴訟に進むことが推奨されます。

弁護士に依頼すべき理由と注意点

カルテ改ざんを主張する訴訟は、法的な立証ハードルが高く、専門知識を持つ弁護士の助言が不可欠です。特に、医療過誤や患者側専門の弁護士に相談することで、証拠の収集方法や訴状の構成、損害額の算定などにおいて適切な対応が可能になります。

なお、証拠が不十分なまま「改ざん」と訴えると、逆に名誉毀損や虚偽訴訟とされるリスクもあるため慎重な対応が求められます。

実際の訴訟例とその結末

過去の裁判例では、カルテ改ざんが明らかになったことで、医療機関に数百万円規模の損害賠償が命じられたケースがあります。一方で、証拠が曖昧であったために原告の主張が退けられた例もあり、準備の精度が結果を左右するのです。

参考:裁判所公式サイトで過去の判例検索が可能です。

まとめ:訴状への記載は戦略的かつ冷静に

・カルテ改ざんを主張する場合は、「いつ」「どこで」「どのように」記録が改変されたかを明記すること
・確実な証拠(電子記録、タイムスタンプ、音声など)を収集して裏付けを
・弁護士と連携し、リスク回避と主張の正当性を両立させることが大切
・可能であれば、裁判前のADRで解決を試みる方法もある

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