交通事故などで第三者行為があった場合、加害者に対して国民健康保険(国保)から医療費の請求が行われることがあります。特に、自賠責保険のみで示談が済んだケースでは、その後の国保の請求がいつ行われるのか不安に思う方も多いでしょう。本記事では、国保から加害者への請求タイミングや仕組み、注意点などを解説します。
第三者行為とは?医療費負担の基本構造
「第三者行為」とは、交通事故や暴力行為など他人の不法行為によってケガを負い、保険診療を受けた場合を指します。本来であれば加害者が医療費を負担すべきですが、被害者が保険証を使って診療を受けた場合は、いったん公的保険(国保など)が医療費の7割を負担し、後にその分を加害者に請求します。
これは「求償(きゅうしょう)請求」と呼ばれ、第三者行為による医療費は、原則として加害者の責任であるという考えに基づいています。
自賠責保険だけで示談した場合の影響
自賠責保険で補償されるのは、被害者の治療費や慰謝料など、一定の限度額までです。この補償が終了し示談が成立した場合でも、国保が支払った医療費(7割分)については示談とは別の請求プロセスで動きます。
つまり、自賠責保険の支払いで終了したからといって、国保からの請求が免除されるわけではありません。
国保から加害者への請求タイミング
国保が加害者に請求を行うタイミングは自治体によって多少異なりますが、一般的には以下の流れとなります。
- 事故届の提出後に医療費のデータが国保に届く
- 医療機関からの請求データが月次で国保に集約される
- 国保が内部処理を行い、加害者に請求書が届く
これらの手続きには時間がかかるため、請求までは事故から数ヶ月~1年程度かかることも珍しくありません。中には2年以上経過してから請求が届いた事例もあります。
具体的な事例:遅れて届く請求の現実
ある交通事故の例では、示談成立後すでに完了したと思っていたところ、1年半後に市役所の国保課から請求が届いたというケースが報告されています。これは、医療機関の診療報酬請求が遅れたり、国保側の処理に時間がかかったことが要因とされています。
このように、請求には明確な期限が設定されているわけではなく、「気づいた時点で請求される可能性がある」と認識しておくのが現実的です。
示談が影響するのは誰との合意か
自賠責保険会社との示談や、被害者と加害者との間での示談は、国保の請求権とは別の話です。自治体の国保担当は示談に関係なく、独自に請求権を持っています。そのため、示談書に「今後一切の請求は行わない」などと記載されていても、国保への影響は基本的にありません。
逆に、国保に無断で加害者と示談をしてしまうと、被保険者(被害者)に対して過払い分を返還請求される可能性もあるため、示談の際は事前に国保担当に相談することが推奨されます。
まとめ:請求は突然やってくる前提で備えよう
第三者行為による事故の場合、国保から加害者への請求が行われるのは原則ですが、その時期は明確ではなく、数ヶ月〜数年後になる可能性があります。示談とは別のプロセスで動くため、請求がなくても処理が終わったとは限りません。
事故後は自治体の国保窓口に「第三者行為による届け出」を忘れずに行い、示談時も必ず相談することが大切です。不安な場合は、自治体に確認することで状況の把握が可能になります。