相続の際、被相続人(亡くなった方)が遺言を残していたとしても、相続人の中には最低限の取り分として「遺留分」を主張できる権利があります。特に家族間でのトラブルを防ぐためにも、遺留分の仕組みと計算方法を知っておくことは大切です。
遺留分とは何か?基本の仕組み
遺留分とは、民法で保障された「最低限の相続分」のことです。被相続人が遺言で特定の相続人だけに財産を与えた場合でも、他の法定相続人には遺留分として請求できる権利があります。
遺留分を請求できるのは、配偶者、子(または代襲相続人)、直系尊属に限られており、兄弟姉妹には認められていません。
遺留分の割合と相続人ごとの権利
直系尊属がいない場合、子ども(またはその代襲者)には法定相続分の1/2が遺留分として保障されます。たとえば相続人が子ども2人だけなら、1人あたりの法定相続分は1/2、よって遺留分はその半分の1/4となります。
つまり、1人の子は財産全体の25%を遺留分として主張できます。
具体的な事例で計算してみよう
今回の事例では以下のような条件です。
- 相続財産総額:家800万円+預貯金500万円=1,300万円
- 相続人:子2人(あなたと兄)
- 法定相続分:兄1/2、あなた1/2
- 遺留分割合:法定相続分の1/2 ⇒ 兄の遺留分は1/4
計算式:1,300万円 × 1/4 = 325万円が兄の遺留分としての請求可能額となります。
つまり、遺言で兄が一切相続しないと書かれていても、325万円を兄に支払う義務が発生する可能性があります。
遺言書があっても遺留分は主張できる?
はい、遺言書があっても「遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)」を行うことで、法定相続人は遺留分相当の金銭を請求できます。
ただし、請求期限は相続開始を知った時から1年以内です。期間を過ぎると時効となり、請求できなくなります。
兄が請求してこない場合は?
遺留分はあくまでも「請求しなければ得られない権利」であり、自動的に与えられるものではありません。兄が何も請求しなければ、そのまま遺言どおりに相続手続きを進めることができます。
ただし、後々トラブルにならないように、法務局の遺言書保管制度を利用する、または公正証書遺言を活用するのが望ましいです。
まとめ:円満な相続のために遺留分の知識は必須
- 遺留分とは、法定相続人に保障された最低限の取り分
- 本事例では兄に最大325万円の請求権がある
- 遺言書があっても遺留分の侵害には請求が可能
- 遺留分請求の時効は1年なので注意が必要
円満な相続のためには、相続人同士の事前の話し合いと、遺言の形式・内容の工夫が重要です。不安がある場合は専門の弁護士や行政書士に相談してみましょう。