小規模事業者にとって、社員の不測の事態による欠勤は業務に大きな影響を及ぼします。特に交通事故など第三者が原因のケースでは、企業として補償を求めることができるのか疑問に思う方も多いでしょう。本記事では、事故加害者側の保険会社に対して会社が請求できる法的可能性について解説します。
まず確認すべきは損害の性質と請求主体
社員が事故に遭った場合、通常はその本人が加害者(または保険会社)に対して損害賠償請求を行います。しかし、会社自体も“間接的被害者”として一定の損害を被る場合があります。
例えば次のような損害が想定されます。
- 欠勤による業務の遅延や契約損失
- 代替要員の臨時雇用費用
- 他の社員の時間外労働や負担増加
こうした損害は、加害者側が予見可能であり、因果関係が明確な場合には、企業が「使用者」として独自に損害賠償請求を検討することが可能です。
企業が加害者側保険会社に請求できるか?
基本的に損害賠償請求の対象は加害者本人ですが、自動車保険(任意保険)の契約内容によっては企業に対しても補償されるケースがあります。
これは主に「対人賠償責任保険」が適用される場合で、被害者(この場合は従業員)に加え、企業が被った損害も“派生損害”として認定されることがあります。
ただし、実際に保険が適用されるかどうかは保険会社の査定によるため、必ずしも全額補償されるとは限りません。
損害の立証には何が必要か
企業として加害者側に損害請求を行うには、以下の要素の立証が必要となります。
- 社員が事故によって業務不能となった事実(診断書や欠勤記録)
- 業務上の具体的損害(取引損失・人件費増など)
- 事故との因果関係(代替措置が困難だったこと等)
これらの証拠が十分に揃っている場合、交渉や法的請求の土台となります。
請求が難しい場合の代替手段
保険会社への請求が困難または認められない場合でも、以下のような方法で負担軽減を図ることが可能です。
- 労災保険による補償の利用
- 業務支援助成金の申請(雇用調整助成金等)
- 弁護士を通じた損害賠償交渉
また、今後に備えて、企業側が加入できる「企業活動保険」や「雇用主賠償責任保険」などを活用することも検討できます。
実際の相談事例
ある飲食店経営者は、社員が事故により半年間業務に復帰できなかったことで、臨時アルバイト雇用費用と売上減少分を加害者側に請求。交渉の結果、保険会社側から一部補償が認められたという事例があります。
このケースでは、事故後すぐに証拠を保全し、専門家のアドバイスを受けたことが功を奏しました。
まとめ:企業の立場でも補償請求の余地はある
社員の事故による欠勤は、企業にとっても実質的な損害をもたらします。加害者側の保険会社に対して企業として損害を請求することは理論上可能であり、実務上も前例があります。
まずは、事実関係の記録と損害の立証を徹底し、必要であれば法的な専門家に相談することで、円滑な補償交渉につながる可能性が高まります。