交通事故に遭った際、「物損事故」から「人身事故」へ切り替えるかどうかは、今後の損害賠償や保険対応に大きく影響します。ところが、切り替えの連絡を警察にした際に、思いがけず責任や刑事処分について言及され、戸惑うケースも少なくありません。この記事では、人身事故への切り替え時に警察が何を確認し、なぜそうした対応をとるのか、その背景と注意点を解説します。
人身事故への切り替えとは何か？
交通事故の被害を受けたとき、警察に通報すると「物損事故」として処理されるのが一般的です。しかし、ケガの診断書が出され、治療を受ける場合には「人身事故」への切り替えが可能です。これにより、加害者側に対して刑事責任や行政処分が発生し、保険の支払いにも影響します。
切り替えには病院の診断書を警察へ提出する必要があり、その後、実況見分や調書作成が行われます。多くの場合、加害者側に罰金や点数の加算が生じるため、慎重な手続きとなります。
警察が「相手もケガをしていたら責任がある」と伝える理由
人身事故として扱う以上、事故当事者全員のケガや過失について公平に調査されます。そのため、警察は「相手もケガをしていた場合は、あなたにも責任が発生する可能性がある」と伝えることがあります。これは、警察が事故の実況見分を行う前に、被害者・加害者の立場に偏らず事実関係を正確に把握しようとする姿勢の一環です。
一見すると脅しのように感じられるかもしれませんが、事故の形態が「出会い頭」である場合、お互いに過失割合がある可能性もあるため、後に不利益を被らないようあらかじめ説明されているのです。
「責任を負わす覚悟があるか」と聞かれる背景
警察が「相手に責任を負わす覚悟があるか」と聞くのは、単に人身事故へ切り替えると加害者に刑事・行政的な処分が発生するため、申告者がそれを十分理解しているかを確認するためです。マニュアル化されているわけではありませんが、責任の重さを理解したうえでの手続きかを確認する意図があります。
この確認により、軽微な事故や誤解による不必要な人身扱いを防止することも目的のひとつです。しかしながら、言い回しや対応に威圧感を感じた場合は、冷静に状況を整理し、必要ならば法的アドバイスを受けるのも有効です。
実際の事故例と警察の対応の流れ
例として、出会い頭の事故で一方が一時停止を怠っていたケースでは、基本的には一時不停止側の過失が大きく評価されます。しかし、被害者側にも徐行義務違反や不注意が認められると、過失割合が変動し、場合によってはお互いに処分が下ることがあります。
このような状況に備えて、実況見分では正確に自分の主張を伝え、相手の違反状況（信号無視、一時不停止、進路妨害など）を丁寧に確認することが重要です。
警察の対応に違和感を持ったときの対処法
警察官の説明に不安を感じたり、納得がいかない場合は、その場で感情的にならず、対応の記録をメモしたり、第三者（弁護士、保険会社）に相談することが有効です。特に「人身扱いにしない方がいいのでは」といった暗示的な誘導があった場合には、冷静に根拠を尋ねても構いません。
また、必要であれば監察官室（警察内部の苦情受付窓口）に申し出ることで、対応の妥当性が審査されるケースもあります。感情的にならず、手順を踏んで対応することがトラブル回避につながります。
まとめ：人身事故対応では冷静な判断と準備を
人身事故への切り替えは、今後の補償や責任に関わる大きな決断です。警察が責任の所在や処分について言及するのは、事故全体の公平な処理を目的としたものです。
威圧的に感じられる言い方に動揺せず、必要な診断書や証拠を整え、法的なアドバイスを受けながら適切に対応しましょう。事故後の一つひとつの判断が、今後の自分の安心にもつながります。