追突事故において明らかな車体損傷がない場合、「本当にケガをしたのか」「因果関係があるのか」が争点となることがあり、自賠責保険の認定が難航することもあります。本記事では、被害者側が複数名に及び、軽微な車体損傷の中で痛みを訴えているケースについて、自賠責の認定基準や対応方法を具体的に解説します。
自賠責保険が支払われる条件とは
自賠責保険は「交通事故によって発生したケガ」に対して補償する制度です。認定の条件としては以下が重要です。
- 事故の発生が事実として確認できる
- 事故とケガとの医学的な因果関係が認められる
- 治療が必要とされる診断書がある
このうち因果関係の認定は、衝突状況や車両の損傷程度が軽微な場合に厳しく見られる傾向があります。
衝突が軽微でも認定されるケースとは
たとえ車の損傷が目立たなくても、自賠責が通るケースは存在します。特に以下のような状況が重なっている場合は有利とされます。
- 事故直後に症状を訴えており、早期に医療機関を受診している
- 家族全員が同様の部位に症状を訴えている
- チャイルドシートやシートベルトを適切に使用していた
- 事故後に診断書が発行され、治療継続中である
特にお子さんが肩の痛みを訴えている場合などは、より慎重な審査がなされる傾向があります。
自賠責審査で否定されやすいポイント
以下のような要素があると、保険会社側が「因果関係が薄い」と主張してくる可能性があります。
- 事故車の損傷が写真などで「ほぼ無傷」に見える
- 事故から数日後に症状を訴えた
- 既往歴や日常動作による痛みとの区別がつきにくい
このような場合は、医師の「事故との因果関係あり」と明記された診断書や、同乗者の同時受傷が説得力を持ちます。
健康保険で治療しながら進めるのが現実的
自賠責の審査は1〜3ヶ月程度かかるため、結果が出るまで健康保険で通院するという選択肢は合理的です。後から自賠責が認定されれば、健康保険分を保険会社が国保や社保に償還する流れになります。
自腹での支払いが苦しい場合でも、病院に「交通事故で保険審査中」と伝えると、後日支払いで対応してくれることもあります。
実際にあった認定・否認の事例
認定された例:
軽微な接触事故でも、事故直後に整形外科を受診し、MRI画像や可動域制限の診断書が提出された結果、腰椎捻挫・頸椎捻挫で認定された事例。
認定されなかった例:
事故から1週間以上経過後に通院を開始し、診断書に「事故との関連性は不明」と記載された結果、因果関係を否定された例。
今できる現実的な対応策
・診断書に「事故による」と明記されているか確認する
・複数の同乗者の症状が一貫していることを記録する
・定期的な通院と、痛みの継続をカルテに記録してもらう
・事故車の現状写真や修理見積もりを保存しておく
また、可能であれば地域の交通事故専門の相談窓口(自治体・弁護士会)を活用しましょう。
まとめ:自賠責審査に向けて押さえるべきポイント
・軽微な損傷でも、受傷と診断がしっかりしていれば認定は可能
・複数の受傷者がいる場合、全体の整合性が審査の鍵
・健康保険での治療継続をしながら、診断内容を明確に残すことが大切
「因果関係が否定されるのでは」と不安になる必要はありません。確かな記録と適切な診療を続けることで、正当な補償を受けられる可能性は十分にあります。