自動車事故の修理で保険を使おうとしたとき、過去の事故と修理箇所が重なっていると、想像以上に複雑な対応を求められることがあります。「今回の傷の修理費を請求したいだけなのに、前の事故の分まで差し引かれるの?」と感じた方もいるかもしれません。この記事では、過去事故と現在の事故が絡む場合の保険対応について、見積や等級ダウン、査定との関係を解説します。
同じ部位に複数の損傷がある場合、どう扱われる?
自動車保険では、「今回の事故で生じた損傷部分のみ」を対象に保険金が支払われるのが原則です。したがって、すでに傷ついていた部分が今回の事故で再び損傷した場合、その部分の修理費用は“前回の事故による損傷分”を控除して精査されます。
これは、保険会社が「事故によって新たに生じた損害分だけを補償する」ために行う措置であり、決して異常な対応ではありません。
過去の事故を申告しなかったらどうなる?
たとえユーザーが過去の事故を申告しなくても、修理見積や車両調査を通じて保険会社が以前の損傷を把握することはよくあります。その際、事故履歴と照合され、「既存傷あり」と判断されれば、その分が査定で差し引かれた金額となるのが一般的です。
逆に、故意に過去の事故を隠して申請した場合、重大な場合には詐欺と見なされかねないため、過去の事故については正直に申告するのが賢明です。
見積を分けて出せない場合の実務対応
ディーラーなどでは、バンパー交換のように左右一体で修理する部品があるため、見積を「右側分」「左側分」と分けるのが難しいことがあります。特に「今回の事故で右側を修理するついでに左も一緒に直る」という構造の場合は、部品が共通であるため物理的な分離が困難です。
このような場合は、保険会社の鑑定人が車両を直接査定し、損傷ごとの妥当な修理費を算出するという方法が取られます。これにより、過去損傷分が差し引かれることもありますが、その査定額が最終判断になります。
等級ダウンの仕組みと影響
自動車保険では、1事故につき通常「3等級ダウン+3年間割増」のペナルティが課されます。仮に過去の事故についても今回あわせて保険を使う場合、それぞれで保険使用扱いになるため、「7等級ダウン(3+4)」となる可能性があります。
この点を理解した上で、等級ダウンを避けて自己負担で直すか、それとも保険を使うかの判断が必要です。将来的な保険料への影響も考慮しましょう。
実例:左右バンパーの損傷があるケース
例:Cさんは、自転車との事故で右側バンパーに傷が入り、保険を使うことにしました。ただし、左側バンパーには以前の物損事故の傷が残っていました。ディーラーからは「左右をまとめて直す部品」と言われ、見積を分けることはできず。
最終的には保険会社の鑑定で、「右側のみであれば◯万円」という査定が出され、その金額から免責分(5万円)を差し引いた額が支払われることになりました。左側の傷は対象外とされました。
まとめ
・過去の事故で同じ修理箇所に損傷がある場合、保険金から差し引かれるのが通常対応です。
・ディーラー見積で分離が難しい場合、保険会社の鑑定で判断されることが多いです。
・事故の申告は正直に行うのが原則で、意図的な隠匿はリスクを伴います。
・等級ダウンは複数事故を使うと合算されるため、慎重に判断を。
・「直しきれない」と感じる場合は、保険会社の説明と査定理由を詳しく確認し、納得できるかをチェックしましょう。