ゴミ屋敷と相続放棄:行政代執行が進行中のケースで知っておくべき実務的ポイント

高齢化社会の進展とともに、ゴミ屋敷問題と相続放棄が交錯する事例が増えています。特に、所有者が亡くなった直後に行政代執行が予定されていたようなケースでは、相続人や自治体の対応に迷いが生じることも。この記事では、実務的な視点から行政代執行と相続放棄の関係について整理します。

行政代執行の基本と発動条件

行政代執行は、地方自治体が生活環境の保全を目的に、所有者に代わって強制的に物件を清掃・撤去する措置です。これは「代執行法」に基づき、必要な法的手続きと警告・催告が済んだうえで実施されます。

例えば、ゴミ屋敷が悪臭や害虫の発生源となっている場合、地域住民の生活環境を守る目的で代執行が検討されます。

相続放棄が成立した場合の扱い

相続人が家庭裁判所で正式に相続放棄をすれば、その人は最初から相続人ではなかったとみなされ、持ち家や資産・債務を一切継承しません。したがって、娘夫婦が相続放棄した場合、行政的にはその家の管理責任を娘夫婦に問うことはできません。

ただし、相続放棄が成立するまでの間にゴミ屋敷の管理責任を事実上引き受けたと見なされる行為(例:清掃依頼を出すなど)をした場合、法的判断に影響が出ることもあるため注意が必要です。

代執行は止まるのか?自治体の判断基準

代執行は基本的に「対象者に執行費用を請求できること」が前提です。所有者が死亡し、相続人も不在(または放棄)であれば、費用の回収が見込めないため、実施を見送るケースもあります

しかし、衛生上の問題などが深刻な場合には、費用回収を度外視して執行されることもあります。自治体の予算・方針・地域住民からの要望などが判断に影響します。

実際の対応はどうなる?ケーススタディ

たとえば、東京都内のある自治体では、相続人全員が放棄したことを確認後、住民苦情の多いゴミ屋敷に対して代執行を敢行。清掃費用は「公費」でまかなわれました。ただし、このような対応ができるのは自治体によって差があります。

別の自治体では、相続放棄が確認されると代執行は中断され、「管理者不明」としての対応に切り替え、周辺住民には理解を求めるチラシを配布するなどの措置を講じていました。

相続放棄者と自治体の対話は有効

娘夫婦が代執行の負担を避けたい場合、自治体に事前に相続放棄の意向を伝え、家庭裁判所での手続きの進捗を報告することが非常に重要です。

また、「代執行を実施してほしい」という要望を伝えることも可能で、自治体によっては調整や柔軟な対応をしてくれる例も見られます。

まとめ:行政代執行と相続放棄の間でできること

ゴミ屋敷と相続放棄が絡む問題は、法的・実務的な要素が複雑に絡み合います。相続放棄を検討している場合は早期に家庭裁判所へ申述し、同時に自治体へ事情を丁寧に説明することが肝心です。

対応次第では、相続人に不要な負担を避けつつ、地域の生活環境保全も可能になります。必要に応じて、司法書士や行政書士への相談も検討しましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール