軽微な接触事故だったはずなのに、後日相手から体の痛みを訴えられ「人身事故」として扱われることがあります。とくにサイドミラー同士の接触など、物損に見える事故であっても、相手が治療を受けると状況が大きく変わってしまうことも。このようなトラブルを未然に防ぎ、冷静に対応するためには、事故の扱い方や人身事故への理解が欠かせません。
物損事故と人身事故の違いとは？
交通事故は大きく分けて「物損事故」と「人身事故」の2つに分類されます。物損事故とは、車や建物など物に損害が発生した事故であり、人のケガがない場合に該当します。一方、人身事故は事故の影響でケガをした人がいる場合を指します。
たとえ軽い打撲や違和感であっても、医療機関で診断書が出されると、警察は人身事故として取り扱うようになります。つまり、事故当日は物損扱いであっても、後日人身事故へ切り替えることは可能なのです。
ミラー接触だけでも人身事故になることがある
サイドミラー同士の接触のような軽微な事故でも、衝撃の瞬間に驚いて身体をひねった・首を振ったなど、わずかな動きから頚椎捻挫（むち打ち）が生じるケースがあります。
実際に、「駐車場内でドアミラー同士が軽く接触し、相手が1日後に首の痛みを訴えて人身事故になった」事例もあります。事故直後に症状が出ていなくても、後から痛みを訴えれば、医師の診断をもとに人身事故として受理される可能性があるのです。
人身事故へ切り替えることで変わること
人身事故として扱われると、次のような影響があります。
- 加害者に行政処分（違反点数・反則金）が発生
- 事故の記録が人身事故として警察に残る
- 保険会社による慰謝料・治療費の対応が必要になる
加害者にとっては、点数の加算や免許の停止など実質的な不利益が出るため、物損扱いのままで終わることが望ましいと感じることもあります。
保険金詐欺では？と疑った場合の対応
事故の状況に対して明らかに過剰な主張があると感じる場合、保険会社にすぐ相談しましょう。保険会社は、診断書の内容や治療日数、事故態様との整合性をチェックし、不自然な点があれば医療調査や弁護士対応を検討します。
また、過去には「軽微な事故を繰り返し、自作自演的に保険請求を行っていた」などの詐欺事件も存在しますが、証拠がないまま「詐欺だ」と主張してしまうと名誉毀損になる恐れがあるため、個人で判断せず、専門機関に委ねるのが得策です。
事故後にしておきたい対応と予防策
事故後は、たとえ物損扱いであっても、次のような行動を取るとトラブル防止に役立ちます。
- 相手と接触した際の状況をスマホで記録・録音
- ドライブレコーダーの映像を保存
- 警察へ「物損」として届け出た記録を保管
- 相手が罵声や不適切な対応をしていたなら、日時・内容をメモ
また、事故現場で相手が感情的になっていた場合は、その場で不用意に謝罪や責任を口にしないことも重要です。
まとめ：軽微な事故でも人身扱いの可能性はある。冷静な対応と保険会社との連携を
一見すると「ミラー同士の接触だけ」のような事故でも、相手がケガを訴えれば人身事故として扱われる可能性があります。事故直後の対応が今後の展開を左右することもあるため、物損で済んだように見えても油断は禁物です。
万が一、人身事故への切り替えが起きた場合は、保険会社への速やかな報告と、記録の確保が重要です。相手の対応に不安がある場合も、決して個人で判断せず、保険の専門家や弁護士のサポートを受けながら、冷静に対処しましょう。