確認の利益は失われる?所有権確認訴訟と返還請求反訴の関係をわかりやすく解説

民事訴訟において「確認の利益」があるかどうかは、訴えが許容されるか否かの大切な分水嶺となります。特に、所有権確認訴訟とそれに対する返還請求の反訴という形で争われる場合、両者の訴訟物の違いや既判力の作用範囲が問題となります。本記事では、所有権確認訴訟における訴えの利益と、反訴が提起された場合の法的意味について、具体例とともにわかりやすく解説します。

所有権確認訴訟の「訴えの利益」とは

「訴えの利益」とは、原告が訴訟によって法律上の利益を得られる見込みがあるかどうかを意味します。所有権確認訴訟では、甲土地が誰のものかという点が実体的に争点であり、訴えによってその法的地位の確定が得られます。

仮に反訴で被告が「自分が所有者だ」と主張して返還を求めたとしても、本訴で原告が所有権を確認すること自体に独立した意味があります。これは、訴訟物の違いと既判力の及ぶ範囲が異なるためです。

本訴と反訴で訴訟物は異なる

所有権確認訴訟の訴訟物は「所有権そのもの」です。一方、反訴としての返還請求の訴訟物は「物権的請求権」(具体的には所有権に基づく返還請求権)です。

つまり、本訴と反訴では「何を争っているのか」が厳密には異なり、反訴だけで所有権の存否が確定するわけではないため、本訴の所有権確認には依然として訴えの利益があります。

既判力の作用範囲の違い

民事訴訟法第114条第1項では、判決の既判力が及ぶのは訴訟物に限られます。つまり、返還請求の反訴で勝訴しても、その判決は「物の返還義務があるか」という点しか確定せず、「甲土地の所有者が誰か」という点は直接には確定しません。

このため、本訴として所有権確認を求めることには実効的な意味があり続けるのです。

債務不存在確認訴訟との比較:なぜ②は訴えの利益を失うのか

一方、債務不存在確認訴訟の場合に、相手方が反訴で履行請求をしてくると、その時点で双方の主張が正面衝突し、債務の有無が直接争点となるため、債務不存在確認訴訟としての独立性や必要性は失われます。

このケースでは、確認訴訟の利益が後発的に失われる(反訴によって主張立証がなされるため)と判断されるのです。ここが①との最大の違いです。

確認訴訟が有効に機能する場面とは?

たとえば、原告が甲土地の所有者であることを確認しておくことで、将来的な処分や登記、または他の利害関係人との争いに対して有利な立場を得ることができます。

また、本訴が確認訴訟であること自体が戦略的意味を持つ場合(例:確定判決によって第三者に対して効力を発揮させたいとき)にも、確認訴訟の訴えの利益は肯定されるのです。

まとめ:訴訟物と既判力の理解がカギ

確認訴訟の訴えの利益が維持されるかどうかは、「訴訟物が異なるか」「既判力の範囲が重複しないか」が重要な判断基準です。

①のケースでは本訴と反訴の訴訟物が異なるため、訴えの利益は維持され、②のように完全に主張が重なる場合は確認訴訟の意義がなくなります。この構造の違いを理解することで、確認訴訟の機能と戦略的価値がより明確になるでしょう。

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