司法書士試験で差がつく「数次相続」の登記処理:事例で理解する一括登記と分割登記の違い

司法書士試験で登場する「数次相続」に関する登記実務は、単なる相続登記以上に混乱しやすいテーマです。特に「一括登記が可能なケース」と「分割して登記しなければならないケース」の違いは、条文や先例を丁寧に押さえることが重要です。

数次相続とは何か?

数次相続とは、相続人の一人が相続登記前に死亡し、その者をさらに別の相続人が相続するような状態をいいます。

たとえば、Aが死亡し相続人Bが不動産を相続することになったが、そのBが相続登記をする前に死亡し、今度はBの相続人Cが相続するというような形です。

登記が一件で済むケースの典型

中間相続人(たとえばB)の持分が全て最終相続人(C)に帰属する場合、登記上は「中間省略登記」が可能となるケースがあります。

このような場合、「A相続、B相続」と登記原因を2本立てで記載した1件の所有権移転登記で完了できるのです。

なぜ事例2は2件の登記が必要なのか?

一見、事例2も上記と同じように見えますが、ポイントは「相続分の共有状態が発生しているかどうか」です。

事例2では、Cの死亡によりA、B、Eが相続人となり、その後Aが死亡してBとDが相続。つまり、Bは2回の相続に関与し、DはAからの単独相続人として権利を取得することになります。

民法と登記実務の視点から見る理由

このように、BとDがそれぞれ異なる経路で権利を取得しているため、「C→A→D」という中間省略登記は成立しません。

登記原因を「C相続」「A相続」の2段階に分け、それぞれの相続関係を明確にした2件の登記が必要になるわけです。

実務上の登記申請例で理解を深める

事例1のように、最終的な相続人が中間者の相続分を単独で承継する場合は、次のような申請が可能です。

登記原因:令和○年○月○日A相続、令和○年○月○日B相続
権利者:C

これに対して、事例2では以下のように2段階での登記が必要です。

  • ①C→A(相続登記)
  • ②A→D(相続登記)

一見非効率に見えるかもしれませんが、これは法的安定性と第三者対抗要件確保のために必要な手続きです。

まとめ:条文・通達・先例を根拠にした判断を

数次相続における登記の取り扱いは、単に登記原因の繋がりだけでなく、相続分の分配、相続人の構成、登記実務の慣行すべてを踏まえた判断が求められます。

司法書士試験では、こうした事例の本質を理解し、「なぜこの形式になるのか?」を論理的に説明できる力が問われます。受験生の皆さんは、先例や判例も活用しながら、理解を深めていきましょう。

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