「体験レッスンだけのつもりだったのに、高額な月謝を請求された」——そんな消費者トラブルは、ダンススクールやカルチャースクールなどで実際に起きています。契約書へのサインや前金の支払いがあった場合、事業者側は「契約成立」とみなす傾向がありますが、消費者としても正しい知識と対応方法を知っておくことが大切です。この記事では、入会の意思が不明確なまま契約扱いされたケースをもとに、今後の対応のポイントを解説します。
契約成立の要件とは?前金やサインだけで成立するのか
日本の法律では、契約は「申込み」と「承諾」が合致したときに成立します。つまり、一方的に書類にサインしただけでは、必ずしも契約が成立するとは限りません。
今回のように「入会時期は未定」と伝えていた場合、明確な入会の意思表示があったとは言い難く、契約が成立していない可能性があります。また、1800円の前金も「申込金」「体験費」としての性質であれば、それだけで契約とは言えません。
スクール側の主張「前金があるから契約成立」は妥当か?
スクールによっては「サイン済みかつ前金ありだから契約成立」と主張してくることがありますが、実際には以下のような条件も必要です。
- 契約内容(受講開始時期、料金体系、支払条件)の明示
- 支払い義務やキャンセルポリシーの事前説明
- 消費者が納得して同意していること
これらが十分に説明されていない、または誤解を招くような説明であった場合、契約無効または取り消しが認められる可能性があります。
過去のトラブル事例と行政の対応
たとえば、全国の消費生活センターには「体験後に勝手に契約された」「説明と違う金額を請求された」といった相談が寄せられています。
東京都消費生活総合センターの報告では、「入会の意思を明示していないのに契約とされた」ケースで、消費者側の主張が認められ、請求が取り下げられた事例もあります。
今後どう対応すべきか?冷静に取るべき4つのステップ
このような状況に陥った場合、次のステップで対応することをおすすめします。
- 1. 書面・メールでやり取りを残す:口頭ではなく、証拠を残す手段で「入会の意思がなかった」ことを主張しましょう。
- 2. 契約書の内容を再確認:月謝発生時期・支払義務などが書かれているかチェック。曖昧な表現がある場合は強制力に疑問が残ります。
- 3. 消費生活センターの介入継続:全国の消費生活センターを通じて、引き続き交渉を依頼しましょう。
- 4. 法的対応の検討:強引な請求や脅し文句がある場合は、弁護士や法テラスなどに相談し、法的対応も視野に入れましょう。
実例:「入会していないのに請求された」ケースの解決
ある30代女性は、ヨガ教室で体験後にサインをしたが「開始日は未定」と伝えていたにもかかわらず、半年後に請求書が届いたとのこと。消費生活センターに相談し、「契約内容の不備と説明不足」を根拠に請求は撤回されました。
このように、明確な意思表示や合意が確認できなければ、契約が有効と認められない場合も少なくありません。
まとめ:契約は「意思の合致」がすべて。消費者も主張する権利がある
一方的に「契約成立」とされても、消費者としての権利は守られています。体験レッスン後の前金やサインだけで正式な契約とされるには、十分な説明・同意があって初めて成立するのが原則です。
不安な請求があった場合は、感情的にならず、証拠を残しつつ冷静に第三者機関を活用して対応することが大切です。